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第270話「まぼろしの美しく青きドナウ」
 第2次世界大戦で荒廃したロンドンのオーケストラの穴を埋めたシドニー・ビアのナショナル交響楽団と Decca の関係も1947年10月に終了となります。その最期の録音のひとつ、1947年10月17日のヨーゼフ・クリップス、お得意のシュトラウス・ファミリーの録音。「美しく青きドナウ」は完了したものの「皇帝円舞曲」はSPレコード片面のみで録音未完となりました。

 「皇帝円舞曲」は半年後の1948年4月にニュー・シンフォニー・オーケストラ(New Syphony Orchestra)と録音されましたが、デニス・ブレインの高貴なソロで始まる「美しく…」は、その後再発されることもなく。私は以前キングレコードによるCD化予告を見たような気がするのですが夢かまぼろしだったようです。  
 写真はAustralian Eloquenceによるニュー・シンフォニー・オーケストラ(NSO)録音を含むCDボックス(22枚組)。デニス・ブレインは、1953年11月25日、このオーケストラの伴奏でブリテンのセレナードを録音しましたよね(CD : Australian Eloquence 476 8470 ©2006)。フィリップ・ステュアートのデッカ・クラシック・ディスコグラフィーを辿っていくと同オケには、1948年から1964年に至るまで London Promenade Orchestra、New Symphony Orchestra of London、London Proms Symphony Orchestra、London Festival Orchestra と様々な変名(pseudonyms)があり、レコード録音専用のオーケストラを思わせますが、創立は1904年とロンドン交響楽団(LSO)と同じ。

 ギャンブルさんに教えを乞いますとNSOとLSOは別の団体で、ロイヤル・アルバート・ホール付属オーケストラをその祖としており、タイタニック号追悼演奏会にも出演している、と教えて下さいました。
2024年4月29日 9時23分(追記)、2020年8月2日 20時57分

第269話「ナショナル交響楽団最初の大録音〜チャイコフスキー/交響曲第5番」


 デニス・ブレインは英コロンビア所属のアーチストという印象が強いですが、本格的なオーケストラの首席奏者としての録音機会は、英 Decca による1944年6月8日、ナショナル交響楽団(ロンドン)のチャイコフスキー交響曲第5番で、それは同レーベルが開発した新しい録音方式 ffrr(全可聴域帯録音) での最初の録音でもあり、かつ楽団の創設者シドニー・ビアの指揮による初録音でもありました。

 それぞれのはりきりぶりは、第2楽章アンダンテ・カンタービレのみ同年5月12日の別テイクが存在していることにも感じられます。

 ビューラー社のホームページに ffrr のことが詳述(英語)されています。
2020年7月17日 21時31分

第268話「ナショナル交響楽団のレコード/指揮レジナルド・グッドール」
 探しました。national symphony orchestra と指揮者名で検索すると出てきますね。

チャイコフスキー/大序曲「1812年」(1945年11月27日録音) Decca K 1349-50


ベートーヴェン/序曲「コリオラン」(1945年11月28日録音) Decca K 1355
2020年7月12日 17時36分

第267話「ナショナル交響楽団のレコード/指揮ウォーリック・ブレイスウェイト」
 Deccaは、78回転録音原盤を全て棄却したといいますので、いまやそれらの音源は個人所有のレコードによるしかありません。Youtube上のKurt Boehmeさんのコレクション内にその貴重な音源がありました。謹んで拝聴させて頂きます。

シベリウス/交響詩「フィンランディア」(1945年3月22日録音) Decca K 1150

 ブレイスウェイトは、同日ウェーバーの「オベロン」序曲も録音しました。彼の紹介文はこちらです。

 またDacca Classical discography (1929-2009)が、こちらで公開されています。こちらのP88〜138によるとナショナル交響楽団は、1944年6月8日のシドニー・ビア指揮のチャイコフスキーの交響曲第5番がffrr方式による初録音でデニス・ブレインが主席ホルン。1947年10月29日のロイヤルトン・キッシュ指揮のモーツァルトの交響曲第32番までかなりの量のレコードを録音したようです。

 上記コレクション内にはフィストラーリ指揮の1944年12月12日録音「未完成」もあり、ロバート・マーシャルの「デニス・ブレインのレコード」初版に掲載されていましたが、英国空軍中央音楽隊の米国演奏旅行中の録音であることから最新版からは除外されているものです。

2020年07月11日 8時28分

第266話「男はつらいよ/寅次郎子守唄(1974年)」
 先日テレビでぼんやりと「男はつらいよ」を見ていましたら、物語の終盤、新年会の集まりか何かで窓際の壁にちょうど「とらや」のよもぎ団子のような色のデニス・ブレインのシュトラウスのLPレコードのジャケットが貼り付けてあるのを発見しました。小道具さんブレインのファンだったのかと楽しく想像してしまいました。








 お盆と正月の風物詩「男はつらいよ」必ず見に行きました。映画の終わりには自然と拍手が起こりました。
2020年7月5日 18時27分

第265話「ナショナル交響楽団のDecca録音」
 ペティットのデニス・ブレイン伝付録ディスコグラフィー、オーケストラ録音編に「デッカ盤ナショナル・シンフォニー・オーケストラの多く」でデニス・ブレインが第一ホルンを奏している、とあります。オーケストラは、第2次世界大戦前後の数年の間、英Decca が誇るffrr(全周波数帯域録音)で盛んに録音し、頭に K を付した番号でシリーズ化していましたが、当時戦争相手国だった日本では一切発売されませんでした。

 それらの78回転レコードが、1990年年代になってから歴史的録音のCD化の波に乗って次々と聞くことができるようになりました。中でも Dutton Laboratories の復刻は、レコードのあらゆるノイズをシャットアウトしているにも拘わらず、音楽の力感がちっとも失われていないので、本当に見事でした。写真は、その第1弾の CDK 1200 で、ヴァーグナーの楽劇「神々の黄昏」から「ジークフリートのラインへの旅」を含むものです。

2020年07月04日 9時21分

第264話「珍しいデゾルミエールとナショナル交響楽団の録音」
 フランスの指揮者、ロジェ・デゾルミエールが1947年5月15日にロンドンでナショナル交響楽団と録音した1枚。デニス・ブレインが録音に参加。楽しみです。
Bizet Patrie 15 May 47 78: Decca AK 2105/6
Bizet Jeux d'Enfants 15 May 47 78: Decca K 1845/6
Chabrier Habanera 15 May 47 78: Decca K 1845/6
Debussy Marche ecossaise 15 May 47 78: Decca K 2095
2020年5月30日 08時32分

第263話「ジークフリートの角笛とオーケストラの楽器」

 デニス・ブレインの「ジークフリートの角笛」は、1947年5月14日に録音されたサー・マルコム・サージェント監修によるレコード「オーケストラの楽器」(HMV C3622)の金管編の最初を飾りました。サージェントはその前年の1946年、1944年発効の教育法に基づいて制作された映画「オーケストラの楽器」でベンジャミン・ブリテンの「青少年のための管弦楽入門」をロンドン交響楽団を指揮しナレーションをしていました。ちょっとややこしいです。

 レコードの「オーケストラの楽器」は、当時のフィルハーモニア管弦楽団のプレイヤー達が演奏していて、金管ではホルンのデニス・ブレインのほかに、トランペットのハリー・モーティマーがハイドンの協奏曲の第1楽章をピアノ伴奏で、トロンボーンはスタンレー・ブラウンがモーツァルトのレクイエムからトューバ・ミールム(妙なるラッパの)を、チューバのウィリアム・スキャンネルがマイスタージンガーの名歌手前奏曲のひとふしを朗々と奏します。

「ジークフリートの角笛」に関する過去記事はこちら

Instruments of the Orchestra (HMV)

C3619 Jean Pougnet (vn), Lionel Tertis(vla) 1947-08-22
Anthony Pini (vc), James W Merritt (dbs), Hubert Greenslade (celeste) 1947-07-07
C3620 John Amadio (fl,picc) 1947-05-14
Peter Newbury (ob, cor angl) 1947-05-14
C3621 Frederick Thurston (cl), Walter Lear (bass cl) 1947-05-14
Archie Camden (bsn), Vernon Elliot(d bsn) 1947-06-17
C3622 Dennis Brain (hr), Harry Mortimer (tpt), Stanley Brown (tb), William Scannel (tu) 1947-05-14
Sidonie Goossens(hp), James Bradshow (Perc) 1947-06-17

from Internet Archive https://archive.org/
2020年4月29日 10時51分

第262話「あれから25年」
 2020年、フィルハーモニア管弦楽団創立75周年記念限定生産BOX(24枚組)が出ます。1995年、創立50周年に楽団の友の会 Friends of the Philharmonia が£30で販売した50周年記念盤(3枚組) PHILHARMONIA Tradition は、いまいちの内容でしたが、今回のWanerの新譜 BIRTH OF A REGEND、なかでもデニス・ブレインのシュトラウスの2番が、ハイレゾ音質で聞けるのは本当に楽しみです。






 やってきました限定BOX。ブレイン時代のカラヤンとトスカニーニ、フルトヴェングラーの四つの最後の歌以外はすべて192kHz/24-bitの新マスタリングでとても高音質。シュトラウスの第2番は、独奏のデニス・ブレインはもちろんオーケストラのメンバーも「そこにいる」と感じられます。

 長年「オケマンとしてのデニス・ブレイン」を追い求めてきましたが、大事なものはこれ一箱にもれなく入っているといっても過言ではありませんね。

 唯一残念なのは、「牧神の午後への前奏曲」にガレス・モリス(フルート)とクレジットされているのに、「亡き王女のためのパヴァーヌ」にデニス・ブレインの名前がないことです!

2020.2.1
 こちらはPHILHARMONIA Tradition。デニス・ブレインのヒンデミットの協奏曲の第3楽章(抜粋)が入っていました。
2019年11月22日 22時06分

第261話「ご支援下さい!」
 2021年はデニス・ブレインの生誕100年です。2011年に DENNIS BRAIN / A LIFE IN MUSIC を著したスティーヴン・ギャンブルさんとビル・リンチさんはその Centenary Edition の出版を目指しておられます。

 記念版には、25%以上の新しい資料、すなわち新たに発見された手紙、同僚によるより個人的な思い出話、ディスコグラフィーにはより多くの独奏曲や約40を超すオーケストラレパートリーや追加の写真、およびロイヤル・フィルハーモニック、フィルハーモニア、ニュー・ロンドン・オーケストラ、ロンドン・モーツァルト・プレイヤーズ、ロンドン室内管弦楽団、ボイド・ニール管弦楽団、英国空軍交響楽団、ロンドン・インターナショナル・オーケストラ、デニス・ブレイン・ウィンド・アンサンブル、ウィグモア・アンサンブルなどのオーケストラとの協演記録も含まれます。

 ただ記念版の出版は、出版社の倉庫に残っている初版180部余りが売り切れることが前提です。そこで日本のブレインのファンの皆様!新しい本の出版を実現するために前の本をお持ちでない方は購入して頂けないでしょうか。

 エリーザベト・シュヴァルツコップの著書『レコードうら・おもて』にある1931年、エレナ・ゲルハルトによるフーゴー・ヴォルフのレコード・アルバムの予約数500人分のうち111人分が日本からの予約者があったおかげで企画が成立した、というエピソードがありました。どうか皆様のお力添えで、約20年間もの間、デニス・ブレインの資料の収集に飽くことなく心血を注いできた苦労を無駄にならないようにできないでしょうか。
2019年10月6日 21時22分

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