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第100話「オペラの中のデニス・ブレイン(7)/ジークフリートの角笛」
 「デニス・ブレインの芸術」中の1曲、ヴァーグナー「ジークフリートの角笛」。歌崎和彦氏の解説に「ブレインがここで吹奏しているのは、有名な「ジークフリートのラインへの旅」をはじめ、4部作の随所に鳴り響くそのジークフリートの角笛の響きをまとめたものである」とあったものですから、随分長い間ブレインが「ニーベルングの指環」からホルンの格好良いところを集めて録音したものと勝手に思っていました。

 本当のところは、「ニーベルングの指環」3日目に演奏される「ジークフリート」の第2幕に出てくる Siegfried's Horn Call そのもので、「ジークフリートのラインへの旅」は4日目の「神々の黄昏」の曲。どちらも良く似ているので紛らわしいですけど、バイエルン歌劇場のハンス・ピッカ教授がホームページで、前者をロング・コール、後者をショート・コールとして音源入りで解説してくれています。

 上記1947年録音はソロでしたが、ブレインが実際オペラでこのロング・コール吹いている、とノーマン・デル・マーが証言した1954年6月25日、コヴェント・ガーデン第100回公演、「ジークフリート」抜粋(英Pearl GEMS0230)は、ブレイン伝の音による再現であり、聞き逃せません。

 一方ショート・コール(ジークフリートのラインへの旅)も、映像を含め残された演奏4点が全て世に出ました。嬉しい限りです。
1944.10.12 シドニー・ビアー指揮ナショナル交響楽団 (1995 Dutton Laboratories CDK 1200)
1950.05.22 フルトヴェングラー指揮フィルハーモニア管弦楽団 (2007 Testament SBT 1410)
1954.04.20 トーマス・ビーチャム指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 (2002 Sony Classical SMK89889)
1954.09.01 ソロ(エディンバラ音楽祭で撮影されたカラーニュース映像) (British Pathe)
2007年10月21日 22時12分12秒

第99話「オペラの中のデニス・ブレイン(6)/二日間」
 この風変わりなタイトルのオペラは、パリ音楽院の楽院長を務めたケルビーニの作曲。

ビーチャムが戦後、新しいオーケストラ、ロイヤル・フィルハーモニックと最も精力的に活動した年(1947年)のスタジオ放送録音でその3年後にも「フランス革命後のオペラ」と題した番組で再び取り上げましたから相当お気に入りだったようです。

 デニス・ブレインの聴き所は、第3幕の牧歌的な間奏曲。ラウー・ホルンを吹いていた頃、特徴的だった溜めのよく効いたふしが聴かれます。

 ケルビーニはほかに「ホルンと弦楽のためのソナタ」があってタックウェルなどが録音しました。
2006年06月24日 10時22分11秒

第98話「満願成就」
 閑話休題。W杯初戦を前にとても嬉しいニュースが二つ。

 デニス・ブレインによる2度目(1953年)のブリテンのセレナードが遂にオーストラリアのユニヴァーサルによりCD化されました。カラヤンとのモーツァルトの協奏曲録音の直後で、アレキサンダーB♭シングルによるものです。モノラルですが強奏時にはベルの振動をも感じる優秀録音です。全てのホルン吹きの方にお勧めします。



 もう一つは日本から。寛いだ気持ちで一家揃って楽しめる名曲の数々を1枚のアルバムにしたカラヤン=フィルハーモニアO.の名盤「フィルハーモニア・プロムナード・コンサート」でデニス・ブレインが吹いたもの。同時に出る「オペラ間奏曲集」のカヴァレリア・ルスティカーナは、デニス・ブレインがオルガンを弾いています。
2006年06月03日 07時23分33秒

第97話「オペラの中のデニス・ブレイン(5)/ファルスタッフ」
 第3幕第2場、アンダンテ・アッサイ・ソステヌート、変イ長調、4分の4拍子。遠くから聞こえるように舞台裏から弁のないホルンで。というヴェルディの指定を無視してデニス・ブレインは、まるでトロンボーンのように大音量で吹き鳴らす。このオペラとあわせて第84話で話した映画ヘンリィ五世を見て下さいまし。
2006年05月27日 09時32分00秒

第96話「オペラの中のデニス・ブレイン(4)/セビリャの理髪師」
 トスカニーニやセラフィンがお国ものを得意としたように、アルチェオ・ガリエラとフィルハーモニア管弦楽団の1950年録音「セビリャの理髪師」序曲は‘スパークリング’な名演。1957年2月、同じ組み合わせで録音された全曲盤は、タイトルの下にマリア・カラスが大書きされ、日本で発売されるイタリア・オペラの最初のステレオ・レコードとなりました。

 デニス・ブレインのスーパー・プレイは、序曲にある2箇所のソロで特に最初のは誰にも真似が出来ないと思います。晩年のブレインは、触れると壊れそうな危うささえあります。

1950 Mono Version

1957 Stereo Version

2006年05月20日 09時14分53秒

第95話「オペラの中のデニス・ブレイン(3)/チェネレントラ」
 1953年秋、デニス・ブレインのいるグラインドボーン祝祭管弦楽団がロッシーニのチェネレントラ(EMI CMS 7641832、P1992)に続けて行ったオーケストラ録音に珠玉のような名レコードがあります。

 モーツァルトの交響曲第38番「プラーハ」、39番とヴィオッティのヴァイオリン協奏曲第22番(ジョコンダ・デ・ヴィート独奏)は国内盤のCDも出ました。とても美しい。そのほかハイドンの交響曲第60番「うかつ者」、ハ短調の95番、ビゼーの「子供の遊び」など。「子供の・・」は指揮者のヴィットリオ・グイにこだわりがあったようで、1955年にSTEREOで再録音されました。とても聴いてみたい。

 チェネレントラは第1幕、第3場の最初にちょっとだけ格好の良いところあります。
2006年05月14日 08時21分07秒

第94話「オペラの中のデニス・ブレイン(2)/イドメネオ K.366」
 デニス・ブレインがモーツァルトの解釈について千葉馨さんに語った言葉「モーツァルトの演奏をするときは、両壁がペンキ塗りたての細い廊下を、真っすぐすうーっと抜けるように演奏しろ、止まっちゃだめだ。右にもよらず、左にもよらず…」(師の相貌より)を読むと、彼の協奏曲にしろ、グラインドボーンでのオペラにしろ、真面目でかっちりとしていてオーバーな演出や誇張なんか決してしないのが当時の英国人の演奏スタイル、だったのかなと思います。

 モーツァルトのドラマティック・オペラ「イドメネオ」の聴き所は、第2幕、第11曲、イリアのアリア「もし私が父上を失い」でデニス・ブレインの雄大な低音と、見事なアルペジオを堪能できます。

 録音は、1950年の「コシ」同様、サセックスの田園地帯にあるオペラ創始者の私邸内で収録した全曲ライヴ録音(1951年6月30日、英SYMPOSIUM 1274&1275、P2002)とそれに続く7月の2日と3日、ロンドン、アビーロード・スタジオで行われたハイライトのレコード録音(うち3曲のみ EMI CDH 7631992、P1989)の2種類。

 デニス・ブレインは、ほかにモーツァルトのオペラを録音しませんでしたが、ティト・ゴッビの独唱「フィガロの結婚」の第4幕、第26曲フィガロのアリア「さあ目をあけろ Aprite un po'quegl'occhi」で威勢のよいシグナルを吹いたものがあります。
2006年04月29日 10時10分47秒

第93話「オペラの中のデニス・ブレイン(1)/コシ・ファン・トゥッテ K.588」
 デニス・ブレインが吹いた《コシ・ファン・トゥッテ》の第2幕、フィオルディリージのアリア、「お願い、許して恋人よ」の録音は何種類あるでしょう?というクイズに3種類と答えた方は正解ですが、4種類と答えた方、大正解!

 ペティットの伝記、付録ディスコグラフィーにソプラノ歌手で言うとジョーン・クロス、ユリナッチ、シュヴァルツコップの3種類がありますね。そのうちユリナッチが歌ったフリッツ・ブッシュ指揮グラインドボーン音楽祭管弦楽団(ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団)による1950年録音にはリハーサル録音があって、それを含めると4種類という訳です。

 その1950年録音、翌シーズンにブッシュが Do it again, please, just for me. (ブレインさん)もう一度お願いします。今度は私だけのために、と頼んだというエピソードが残っているだけあって天かけるような名演奏かと思いきや、珍しく音程が怪しくなったり、上述のリハーサル録音では出だしの音を外したりするから大変!(Testament SBT1040、P1994)

 ジョーン・クロス、ローレンス・コリングウッド指揮フィルハーモニア管弦楽団との1947年録音は、アリア1曲のみ(Dutton CDLX 7018、P1995)。当時、自国語歌唱をスタイルにしていたサドラーズ・ウェルズのスター、ジョーン・クロスが Per Pieta ではなく Ah, my love と歌い始める。

 シュヴァルツコップ、カラヤン指揮フィルハーモニア管弦楽団の1954年録音。シュヴァルツコップのドイツ語っぽい発音と最後でホルン・セクションが唐突に大きな音を出すところが特徴です(EMI CMS 5671382、P1999)。

 デニス・ブレインが魔法をかけたこのオペラをその後(ニュー)フィルハーモニア管弦楽団はとても得意にして、カラヤンの後も1962年ベーム、1967年ラインスドルフ、1971年クレンペラーとの録音があります。
2006年04月22日 08時39分00秒

第92話「祝 トリノ五輪、荒川静香選手金メダル!」
 山尾敦史さんがご自身のブログ山尾好奇堂でフィギュア・スケートの荒川静香選手がフリー・プログラムで使った音楽「トゥーランドット」(誰も寝てはならぬ)がヴァネッサ・メイの演奏と書かれていました。ヴァイオリン独奏によるアレンジなので開会式でテノールのパヴァロッティが歌ったようなオペラ原曲とは変わった感じでしたが、ともかく良かったです。

 誰も寝てはならぬ Nessun Dorma にはデニス・ブレインのいるフィルハーモニア管弦楽団にも録音(1949年)があって愛聴しています(EMI 5 66811 2、P1998)。ルドルフ・ショックの歌も感動的だけど、ブレインが目一杯大きな音を出して盛り上げているんですよ。ベニアミーノ・ジーリのもあります。

 それから荒川選手がショート・プログラムで使ったショパンの幻想即興曲嬰ハ短調 Fantaisie-Impromptu のこちらはオーケストラ版。それそのものかどうかは判りませんがエフレム・クルツの指揮で1955年6月に録音されたメモリアル・アルバム「パヴァロアを讃えて」(山野楽器 YMCD-1044、P1997)の中にあります。
2006年02月26日 19時36分34秒

第91話「スクリュー音を聞き分ける」
 1月6日付け朝日新聞(関西)朝刊のトップ記事「12歳に敵艦探知訓練」には驚きました。

 当時、Deccaは英国海軍から依頼により、自国とドイツの潜水艦を識別可能にするための特殊レコードを製作。

 同社の開発したffrr(全可聴音域録音)による最初のレコーディングが、1944年5月12日、キングズウェイ・ホールで行われたデニス・ブレインのいるナショナル交響楽団(指揮シドニー・ビーア)によるチャイコフスキーの交響曲第5番(K1032-6)。ハイファイ・レコードのはしりとなりました。
2006年01月06日 22時42分42秒

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