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第110話「The BBC Written Archive」
 英国はオックスフォードシャー州、ケイバーシャムに The BBC Written Archive という施設があります。BBCの設立当初からの番組表をはじめ、出演契約書、出演者との間の手紙、メモなどあらゆる書類を保管していて、熱心なブレイン研究家たちが知られざる記録を求めてここを訪れます。

 新しいデニス・ブレインの伝記の出版を目指すスティーヴン・ギャンブル氏もその一人。デニス・ブレインのBBCのラジオ番組への出演を探索して当サイトの演奏記録に寄せて頂きました。まずは1948年。ホーム・サービス、サード・プログラム、ライト・プログラムの各番組から16本。その多くが演奏会やレコーディングと同じ日なのに改めて驚きます。

 また元BBCプロデューサーのジョナサン・ストーンマン氏はブレインがBBCの関係者に宛てた手紙を何通も発掘して、英国ホルン協会誌 The Horn Player 2007年夏季号に掲載しました。その中から1942年7月付けの1通を抜粋で。
拝啓 ブリス様

 父より貴方へBBC交響楽団とモーツァルトの協奏曲を演奏させて頂けないものかお手紙差し上げるよう申しつかりました。出来ることなら現在所属しております空軍オーケストラとオドンネル大佐の指揮によりナショナル・ギャラリーで演奏した第4番変ホ長調を演奏したく存じます。常々一度BBC交響楽団と演奏したく存じておりますので、何卒お取り計らいの程よろしくお願い申し上げます。

敬具

 デニス・ブレイン
2008年10月25日 09時23分16秒

第109話「贋(にせ)録音」
 デニス・ブレインの演奏には裏切られないのが常です。でも一度だけ「食わせ物」に出合ったことがあります。アメリカからやって来たヨゼフ・カイルベルト指揮WDR管弦楽団のヒンデミットのホルン協奏曲を収めたというカセットテープがそれ。もしや1951年1月22日にケルンで行われた2回目のライブ演奏か!と胸を膨らませて再生したところ、なにやらひどく音が篭(こも)っている上、どこかで聞いたような演奏。しかも終楽章であるはずの朗読が無い。作曲者自身とフィルハーモニア管弦楽団のスタジオ録音に細工した贋(にせ)のライブ録音だったのです。本人の演奏が贋物というのも可笑しな話ですけどね。
2008年10月18日 20時38分01秒

第108話「池田重一ソロ・リサイタル」
大阪フィルハーモニー会館 大阪フィルハーモニー交響楽団の首席ホルン奏者、池田重一さんのソロ・リサイタルに行ってきました。ホルンのソロの演奏会は滅多にないので逃せません。

 会場は大阪市西成区岸里にある大阪フィルハーモニー会館。連休の中日(なかび)にもかかわらず、会場前には早くから若いファンが大勢詰めかけて、列を作りました。

 トップ・オーケストラの首席奏者といえば大男(故千葉馨さんしかり、近藤望さんしかり)を想像していたのですが、舞台袖から現れた池田さんは、案外普通というより華奢な印象。でも前半最後のプログラム、ヒンデミットのソナタは圧倒的な大音量で締めくくられました。

 ホルンに対するイマジネーションとモチベーションとともに、昨年出されたCD『はるかな音、奏でる言葉』のブックレットにサインを頂いて大満足で家路につきました。
■プログラム
ホームズ/セレナード
グラズノフ/夢
ライネッケ/夜想曲作品112
ヒンデミット/ソナタ
〜休 憩〜
ジャックス/ファンファーレ
ボザ/アイルランドにて
ルメール/夜想曲
アニシモフ/ポエム(詩曲)
(アンコール)
アリャードフ/シンフォニア・パストラーレ
ベルトゥロ/小変奏曲〜少年団の歌による
2008年10月13日 16時52分29秒

第107話「エジンバラ音楽祭から」
  因みに、1年前の1956年(第10回)は、サー・トーマス・ビーチャムのロイヤル・フィルハーモニックが演奏会を持ちました。8月19日の初日の第九演奏会は昨年 BBC LEGENDS(BBCL 4209-2) でCD化。デニス・ブレインの同僚だったブライマー(cl)、マクダナー(ob)、ブルック(fg) らが綺麗な音色を聞かせます。

 エルガー編曲の英国国歌 God Save the Queen もなかなかの聞き物です。
8/19
英国国歌(エルガー編)
ベートーヴェン/交響曲第9番
フィッシャー(s)、メリマン(ms)、ルイス(t)、ボルグ(bs)、エジンバラ音楽祭合唱団

8/20 (サー・アーサー・ブリス指揮)
ブリス/エジンバラ序曲
ブリス/ヴァイオリン協奏曲 カンポーリ(vn)
ブラームス/交響曲第2番

8/22
シュトラウス/交響詩「ドン・キホーテ」
ベルリオーズ/交響曲「イタリアのハロルド」
 J.ケネディ(vn)、リドル(va)

8/23
ボッケリーニ/序曲ニ長調
グレトリー/舞踏組曲「ゼミールとアゾール」
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第4番 カサドシュ(pf)
バラキレフ/交響曲第1番

8/24
アーネル/景色と人々(初演)
ディーリアス/幻想曲「夏の庭にて」
シューベルト/交響曲第6番
シベリウス/交響曲第6番
ベルリオーズ/序曲「ウェーバリー」
2008年03月8日 14時14分14秒

第106話「最後の演奏会録音」
 1957年8月、第11回エジンバラ音楽祭、アッシャー・ホールにおけるフィルハーモニア管弦楽団の演奏会。29日が大地の歌(指揮クレンペラー)、30日が運命(同クーベリック)、31日が悲愴(同オーマンディ)という一連のプログラムは、あくまで偶発的なこととはいえ翌1日のデニス・ブレインの事故を想い起こしてしまいます。

 そのクーベリックとの演奏会録音が50年余を経て世に出ました(Testament SBT1421)。音源は恐らくBBCが自前の放送音源を海外の放送局に配信するために製作したレコード。L.マーシャルの労作「デニス・ブレインのレコード」の年代順のページの最後に記載されていて、その存在が知られていたもの。

 レコード盤からの復刻で音質では「ルツェルンの第九」に及ばないけれども、運命はこの「エジンバラの第五」を聞いていこうと思います。
2008年03月1日 11時58分12秒

第105話「モーランのシンフォニエッタ」
 山尾敦史さんの本のタイトルじゃありませんが現代英国音楽入門に相応しいアーネスト・ジョン・モーラン (1894-1950) のシンフォニエッタ (1944) の音源をご紹介します。1947年4月26日、ロイヤル・アルバート・ホールでのサー・トーマス・ビーチャムとロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団によるライブ録音。どこか古典交響曲のようで英国の美しい田園風景を思わせる曲のあちこちで若きデニス・ブレインの妙技が聞けます。
2008年01月21日 21時21分21秒

第104話(削除)
 

第103話「イン・メモリアム」
 デニス・ブレイン没後50周年の昨年、ロンドン初演されたのがベンジャミン・ブリテン (1913-1976) の「イン・メモリアム」。ブリテンが1957年、ブレインの死を悼んで書き始めながら未完に終わった曲を、ホルストの「惑星」に冥王星を加えたことで知られるコリン・マシューズ (b.1946) が2005年、ブリテンの草稿を元に4本のホルンとオーケストラで完成させたもの。どうも2006年のオールドバラ音楽祭で初演されたらしい。

 この In Memoriam Dennis Brain、BBC Radio 3 の Classical で2007年9月1日、ナッシュ・アンサンブルのプロムスでの演奏を聞けるかも…。
2008年01月05日 11時16分21秒

第102話「衛兵交替」
 2007年の暮に Eagle & Lyre Publications から出版された写真集"Music in Blue"(英国空軍中央音楽隊楽長、ギルバート・シングルトン著)に、英国空軍創立25周年にあたる1943年4月1日、バッキンガム宮殿の衛兵交替でパレードする中央音楽隊の写真が掲載されました。

 デニス・ブレインはあいにく額の部分しか写っていませんが、間違いなく4番奏者の L.Isaacs や後にフィルハーモニア管弦楽団の首席奏者となるトランペットのハロルド・ジャクソンらと一緒に隊列を組んで、なにかの行進曲を吹いているようです。
2008年01月04日 23時40分01秒

第101話「デニス・ブレイン記念奨学金」
 私の父はデニス・ブレインが在籍した当時のセント・ポール・スクールの教務主任で、彼にオルガンとラテン語を教えました。同じころセント・ポール女学校の音楽部長は、グスタフ・ホルストでした。それで父は父兄としてオーブリーを知っていましたし、オーブリーが主席ホルンを務めていたBBC 交響楽団のチェロ奏者、アンブローズ・ガントレットの親しい友人でした。

 父T.L.マーティンの名前は、学校による記念演奏会の発起人の1人としてスティーヴン・ペティットの伝記に載っています。子供だった私は、大変幸運にもブリテンとピアーズによるリート・リサイタル、F.ジェルマーニによるオルガン・リサイタル、ベノ・モイセイヴィッチによるピアノ・リサイタル、オーボエのレナードとホルンのA.シヴィルらとデニス・ブレイン木管五重奏団などの演奏会に行くことができました。彼らはすべてデニスを追悼する記念奨学金のために、無料で演奏会に出演したのです。

ロバート・マーティン(アバディーン・シンフォニエッタ主席ホルン奏者)
2007年12月24日 23時02分25秒

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