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第240話「レコード芸術2017年5月号新譜月評」
 レコード芸術2017年5月号の新譜月評(協奏曲)のNHK交響楽団/千葉馨によるR.シュトラウス/ホルン協奏曲第2番と第1番の評論には天国にいるバーチさん(と親しみを込めて呼ばせて頂きます)も苦笑されたに違いありません。

 まず「千葉馨によるソロの録音はわずかで」とあります。そもそもホルン協奏曲は、モーツァルトの4曲と、このリヒャルト・シュトラウスの2曲が全てと言っても過言ではありません。モーツァルトの全曲録音とシュトラウスの2曲がカタログに載ったホルン奏者は、世界的に見てもデニス・ブレイン、バリー・タックウェル、ヘルマン・バウマン、ペーター・ダム、ズデニェク・ティルシャルといった名人を数え上げても10人に満たないでしょう。それに私が個人で編んだディスコグラフィーでもソロ録音は20曲近くありますから。

 次に言われる「第2番は第1楽章がかなり不調で、尻上がりによくなるとはいえ、聞き通すのはややつらい」についてはどうでしょう。むしろ問題とされている第1楽章の練習番号4の2小節前に出てくる最高音変ホをグリッサンドで奏されているところなんか凄いですよ。ほかに聞いたことがありません。(因みに1987年6月の九大フィルハーモニーオーケストラとの演奏ではグリッサンドはかかりません)

 バーチさんの師匠のデニス・ブレインが1947年9月、26歳で元気一杯のときにフィルハーモニア管弦楽団と録音を試みて未完となったことでもわかるように、第2番はともかく難曲です。1942年、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のゴットフリート・フォン・フライベルクが演奏困難なウィンナ・ホルンを操って初演を成し遂げた当時の放送音源も記録されていること自体が奇跡でしょう。バーチさんの残された演奏を日本人として初めての商業用ディスクとして大切にしたいですね。  
2017年7月23日 16時55分

第239話「マクシミリアン・ツィモロング」
 ワーナーの新譜「カール・ベーム/ザ・アーリー・イヤーズ」にマクシミリアン・ツィモロングのホルン協奏曲第3番変ホ長調K.447があります。録音は1940年とありますので、オーブリー・ブレインがBBC交響楽団と同曲を初録音した年と同じです。

 ツィモロングはシュトラウスの第2番を2番目に演奏した奏者でそれがデニス・ブレインであるとした定説が覆りました。バイオグラフィーによると戦前のフルトヴェングラーのベルリン・フィルハーモニーとシュターツカペレ・ドレスデンで首席奏者の両方でをつとめ1958年から1959年にかけて日本で教育されたとあります。稀有な方だったようですね。

ツィモロングのバイオグラフィー(ポーランド語)はこちら
リヒャルト・シュトラウス/ホルン協奏曲第2番
2016年6月10日 8時43分

第238話「フォー・ノー・ワン」
 ジャスパー・リーのジョージ・マーティン・インタビュー。1966年6月、ビートルズのアルバム「リボルバー」の1曲『フォー・ノー・ワン』の伴奏ホルンにアラン・シヴィルを起用した経緯を触れています。

 ジョージ・マーティンはフレンチ・ホルンに高音はどうかと思いつつ、(シヴィルの技量を見越して)高音で譜面を書き、シヴィルも「いつものホルン」で顔を真っ赤にしながら吹いていたと言います。2時間半余りのセッションではかなり煙草を吸っていたと言いますから大変だったみたいですね。
オリジナルのアラン・シヴィルによる演奏はこちら
ジェフリー・ブライアントによる演奏はこちら
2017年5月28日 11時25分

第237話「ロベルト・イングレスと彼のオーケストラ」
 英国のジャーナリスト、ジャスパー・リーによるビートルズのプロデューサー、ジョージ・マーティンへのインタビューにデニス・ブレインに関する大変興味深い証言があります。

 ジョージ・マーティンは若い頃、クラシック音楽のレコーディング、デニス・ブレインが参加していたカール・ハースのロンドン・バロック・アンサンブルの録音をプロデュースしたことは知られています。そのジョージ・マーティンがラテン音楽の「ロベルト・イングレスと彼のオーケストラ Roberto Inglez and His Orchestra」の録音にしばしばデニス・ブレインを起用した、というのです。

 なにしろSPレコードの時代に大量に録音されたムード音楽で楽曲毎に演奏者が特定のしようもありませんが何枚かの復刻CDで確かに流麗なホルンの音色を耳にすることができます。
【参考CD】
Vocalion CDEA6062 ROBERTO INGLEZ & HIS ORCHESTRA / Come Closer To Me
Vocalion CDEA6095 ROBERTO INGLEZ & HIS ORCHESTRA / Volume 2 Melody Maker
Vocalion CDEA6131 ROBERTO INGLEZ & HIS ORCHESTRA / Volume 3 High in Sierra

ジャスパー・リーによる元記事はこちら
デニス・ブレインとポピュラー音楽
2017年05月21日 21時03分

第236話「千葉馨のジャズ録音」
 バーチさんが2枚のジャズのレコード録音に参加されたことをご存じでしょうか。1枚目は1967年からオーディオ・メーカーのタクト電機株式会社が発売していた一連のジャズのレコード発売1周年記念第1回新譜「アンコール!ジャズ&ボッサ」(Takt JAZZ-3001)。1967年12月5日と6日、文京公会堂での録音で、渡辺貞夫や原 信夫とシャープス&フラッツにゲスト演奏者として登場されました。

 曲はマイルス・デイヴィスの「ナルデイス」、アントニオ・カルロス・ジョビンの「ユースレス・ランドスケープ」「コルコヴァード」、チャーリー・マリアーノの「ケベック」、M.ヴァレ、P.S.ヴァレ、ギンベルの「ソ・ナイス」と5曲にもおよびます。和田誠さんによるイラストレーションも素敵な見開きダブル・ジャケット。

 ただこのレコードは当初収録されたうちの1曲「ユースレス・ランドスケープ」が「イン・ザ・ウィー・スモール・アワーズ」に差し替えられ、レコードのタイトルも「渡辺貞夫とシャープス&フラッツ」と変更され、1977年にRCAレコードから廉価盤で再発売(RVL-5520)されました。このあたりは長門達也さんの本「シャープス&フラッツ物語」(小学館、2009.7.26)に詳しいです。

 2枚目は、トランペットの日野皓正のアルバム「フィーリン・グッド」の全6曲のうち「ミシシッピー・ディップ」「フィーリン・グッド」「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンド」の3曲。録音は1968年6月。

 師匠のデニス・ブレインもボブ・シャープレス楽団のアルバム「コントラスツ・イン・ハイファイ」で、またバリー・タックウェルも「シュア・シング」で異分野でのホルン演奏を披露しました。日本のバーチさんはホルンでジャズをレコーディングする先鞭をつけられた訳ですね。
2017年5月3日 9時55分(2018年11月18日21時20分 加筆修正)

第235話「千葉馨/リヒャルト・シュトラウス第1、第2」
 出ました!千葉先生のシュトラウスは東京佼成ウィンド・オーケストラとの第1番(LPレコード)や九大フィルハーモニーオーケストラとの第2番(自主製作盤)がありましたが、本家NHK交響楽団との演奏は聞いたことがありません!なんかワクワクしますね!

 これで師匠のデニス・ブレインと同じくモーツァルトとリヒャルト・シュトラウスの協奏曲全曲盤がカタログに並んだことになり大変嬉しく思っております。
 バーチさんと同時代に日本フィルハーモニー交響楽団で活躍された松原千代繁さんから思い出話を伺いました。昔バーチさんがBK(大阪放送オーケストラ)と岩城宏之さんの指揮でシュトラウスの1番のコンチェルトを演奏する機会がありました。当の松原さんは堀川高校の学生で風呂敷にホルンを包んでバーチさんの楽屋を訪ねられたところ、「まあ入れよ」見たいな感じで気さくに呼び入れてくれたそうです。

●インタビュー・・・松原千代繁 バーチのホルンは一代限りの「芸」 PIPERS 2008年9月号
●千葉馨ディスコグラフィーはこちら
2017年02月24日 20時50分

第234話「レコード芸術2月号」
 レコード芸術2月号の特集、読者と本誌執筆陣で選ぶ「ベスト・ディスク・ランキング2016」に私の投稿(18位のブルックナー交響曲第7番)が載りました。ブレインの録音はありませんが、1954年ルツェルン音楽祭でフルトヴェングラーとの演奏記録はあります。ベルリン・フィルハーモニーとのレコードには満足出来ませんでしたので、大阪フィルハーモニー交響楽団の伝説のライブ録音を聞いています。
2017年01月29日 21時25分

第233話「ビーチャムのディーリアス・ボックス (7CD)」
 Wernerが出すトマス・ビーチャムのディーリアスボックス。ブレイン時代の演奏は3枚目のダンス・ラプソディ第1番、ヴァイオリン協奏曲、ピアノ協奏曲、交響詩『山の上にて』、合唱曲『人生のミサ』の第2部への前奏曲。4、5枚目の『村のロメオとジュリエット』あたりです。6、7枚目の『ハッサン』『コアンガ』『アパラチア』『おとぎ話』『パリ、大都会の歌』などは戦前のロンドン・フィルハーモニックとの旧録音のようですね。
ビーチャムの2番目の妻ベティ・ハンビーがソリストのピアノ協奏曲は確か初CD化です!

 歌劇『村のロメオとジュリエット』の原作ゴットフリート・ケラー『村のロメオとユリア』の岩波文庫本が2014年夏に重版になっています。また読み直してみたいと思います。

『村のロメオとジュリエット』に関する過去記事はこちら
2017年01月29日 21時13分

第232話「交響詩《ローマの噴水》」

 もう一つ。CD化されていないアルチェオ・ガリエラとの《ローマの噴水》。1955年最良のモノラル録音。
2017年01月09日 10時38分

第231話「歌劇《イーゴリ公》組曲」

 Oliver Nunnさんの動画コレクションでまたも珍しいLPを発見しました!1952年6月、フルトヴェングラーとトリスタンの録音を終えたばかりのフィルハーモニア管弦楽団がワルター・ジュスキントとパーロフォンに録音したボロディンの歌劇《イーゴリ公》から序曲、ダッタン人の行進、ダッタン人の踊りの3曲。序曲でのデニス・ブレインのソロ(3'46")絶妙ですね。オーケストラもまだフルトヴェングラーの魔法がかかっているようで、なんか凄いことになっています。
9, 10, 11, 12, 13, 14, 16, 17, 18, 19, 20, 21 and 23 June 1952, Kingsway Hall

Wagner
Tristan und Isolde

Furtwängler
Covent Garden Chorus
Flagstad, Thebom, Suthaus, Fischer-Dieskau, Greindl, E.Evans, Schock, Davies

23 June, 1952, Kingsway Hall

Wagner
Immolation Scene
(Götterdämmerung)

Furtwängler
Flagstad

24 & 25 June, Kingsway Hall

Mahler
Lieder eines fahrenden Gesellen

Furtwängler
Fischer-Dieskau

25 June and 1 September 1952, Kingsway Hall

Borodin
Prince Igor, Suite

Susskind

(from Philharmonia Orchestra: complete discography 1945-1987 / Stephen J Pettitt)
2017年01月09日 9時08分

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