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280.こんども右手

name: CATO - 2002年12月14日 9時35分06秒

 右手については、昔吹いていた頃に特に指導を受けた記憶がありません。先輩の真似で、なんとなくベルに入れて、大きめの卵をやさしく掴むようなような感じで添えていました。
 前にこの掲示板でカラヤンの「真のジャーマンサウンド」の事が出ましたが、ドイツ式の籠もるような音には、伝統的な右手の作法があるような気がします。特に指示でもない限り、パリッという音は出さないようなしきたりのような気がします。
 例えば、ブレインが吹くヒンデミットの第二楽章の終わりに、ファンにはたまらない、ややワイルドな短い強奏部分がありますが、これなんかベルに手が入っていない音のように思います。ホルン全開の感じです。ブレインの音はとにかくホルンの能力全開の、管がパンパンに張った感じが魅力です(例えばRシュトラウスでの力技の凄さ!)。どんな楽器も彼の能力に対応し切れなかったのでは。楽器がとことん絞られている感じです。
 「奇跡のホルン」に新しい慣れない楽器がしっくり来ないときのエピソードがあります。ホルンに限らず管楽器の先端は奏者の肺、気道、口腔、鼻腔の延長にある管の先端です。前半は筋肉の管、後半が金属の管です。気道表面の個々人の個性を持つ分泌物がホルンの管の内面を覆ってこそ、肺からベルの先までが完成し、その人独自の音が形成されて当然でしょう。新しい楽器では後半が他人です。
 ホルンを吹くための天与の生理的構造を与えられたブレインが、肝心の先端を無意味に塞がなかったとしても納得できます。医学的なことゆえ素人は控えるべき想像でしょうが、珍説を許してください。子供のときのブレインの扁桃腺手術の失敗が、ブレインの完璧な気道の構造にさらに完璧な補強を施したのではないか。とにかくあの粒だちは他の奏者では決して聴けません。普通の人間が吹けばモゴモゴするのがホルンです。天性と努力と人生のハプニング(手術の「失敗」)、これらがブレインの音を形成した。右手のことは指揮者や楽譜からの指示でもない限り、ブレインは余り気にしなかった?


279.またまた右手

name: 大山幸彦 - 2002年12月14日 0時07分13秒

夢中人様、ご指摘ありがとうございます。

しばしば、テヴェ先生のあの音がセルメルのピストン式楽器のせいだと言われます。もちろん一部はそうですが、それより重要なのは彼の音感(ソルフェージュと音の嗜好双方)とそれに密着している彼の奏法です。ですが、多くの奏者は、本能的に自分が現在に信じている奏法から逸脱している事は認識したくないので、楽器の差、という問題に持っていきたがるのではないか、と思います。

ブレインに関しても同じで、彼が畢竟の天才だとかピストンを吹いた(個人的には最大の関心がありますが)という前に、彼が現代の主流を占める奏法とは全く違う方法を(右手のこともその中の最重要な要素の一つ)選択し、それゆえに絶大な結果を獲得しえたという事に、もっと目をむけるべきだと思います。

ちなみに右手を使うべし、という現代の神話は、下記のイギリスの鱒釣り名人がいったことに似てると思います。

弟子「フライ・フィシングでは投げたフライを揺らしてはいけない、と教え   ますが、どうしてですか?」
先生「簡単だ。フライを揺らさない釣りをフライ・フィシングというから    だ」


278.グラインドボーン音楽祭

name: Favart - 2002年12月13日 22時41分37秒

SYMPOSIUMのsiteには1951年6月30日とあり、HMV盤とは別録音のようですね。
夢中人様のディスコグラフィーの中にあるコシ・ファン・トゥッテEMI CDH 7 63199 2 P1989の中にイドメネオも入っているのでしょうか?同じCD番号で、こんなのがあります。(NHK「20世紀の名演奏」2002.10.6午前9時)
http://...
今年の年末にもNHKでグラインドボーン音楽祭の放送(12/28?)があります。たしかモーツァルトでした。
仲間と一緒にピクニック・バスケットにサンドイッチやワインをぎっしり詰めて持ってゆき、幕間に屋外の芝生で食事と会話を楽しむ「これ、極楽!」でしょう。いつか行ってみたいなあ。パリのSalle Favartでもオペラの幕間はパンとワインとガヤガヤでした。
海外通販の件、ようやく昨日レコードが到着しました。NJのレコード業者も不景気で苦労しています。下記、困った時のご参考まで。なお、この業者はこれからも事業を続けるとのことです。支援してあげたくなります。
ホルン奏者の右手はいったい何をしているのか、素人が見ると興味津々です。

Favart様
すみませんまた月を読み違えました。「イドメネオ」のHMV録音は序曲を含む12曲でしたが、ご指摘のCD「ユリナッチ名唱集」EMI References CDH 7 63199 2(P1989)にはそのうちアリアが3曲入っています。2番目の“もし父を失うならば”にはかなり長いホルンのソロもあり、間違い無くデニス・ブレインです。お気に入りに入れました。このCDにはデニス・ブレインの素晴らしいホルン・ソロを伴う「コシ」の“どうぞ許して、あなた”や珍しいチャイコフスキーの歌劇のアリアが入っているのでとても大事にしています。またシュトラウスの四つの最後の歌は、ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、ひょっとするとスカンディナビアのホルンの父と言われたWilhelm Lanzky-Ottoかなッ?と思いましたがあちこちで音が滑りました。1曲ごとに盛大な拍手が入ります。
 夢中人

277.1951年グラインドボーン音楽祭〜モーツァルト/歌劇「イドメネオ」

name: 夢中人 - 2002年12月13日 21時26分13秒

昨日グラインドボーン音楽祭管弦楽団(GFO)に関する投稿を行った翌日、イギリスから届いたSYMPOSIUMの2002年秋のカタログを見て驚きました。1951.7(正しくは6.30.グラインドボーン、フリッツ・ブッシュ指揮、グラインドボーン音楽祭管弦楽団、モーツァルト/歌劇「イドメネオ」(CD 1274/75)が出ています。

確かフリッツ・ブッシュ(1890 Siegen - 1951.9.14 London)が生涯最後となった1951年グラインドボーン音楽祭で指揮したのは、デニス・ブレインのソロで有名な同じモーツァルト/歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」ではなかったろうか・・・?例の本で検証してみました。

歌劇録音年表(HMV、ブレイン関連のみ)

1947.9.29/1948.1.16 ヴェルディ/マクベス(2景) T.ビーチャム/RPO 録音場所:アビーロード
1950.7.12/14/15 モーツァルト/コシ・ファン・トゥッテ(全曲) F.ブッシュ/GFO 録音場所:グラインドボーン
1950.9.22 コシ・ファン・トゥッテ、デスピーナのアリア W.ジュスキント/フィルハーモニア管弦楽団 録音場所:アビーロード CD:Testament SBT1040、P1994
1951.7.2/3 モーツァルト/イドメネオ(抜粋) F.ブッシュ/GFO 録音場所:アビーロード
1953.9.12-21&1954.2.15 ロッシーニ/シンデレラ(全曲) V.グイ/GFO 録音場所:アビーロード CD:EMI CMS 7 64183 2、P1992

録音日付、場所の違いにご注目下さい。またSYMPOSIUM盤のキャストにはHMV盤には見られないビルギット・ニルソンやレオポルト・シモノーの名前も見られます。かなり状態の良いテープ録音ともあり、知られざるライヴ・テープからのCD化と大変期待しています。



276.右手

name: 大山幸彦 - 2002年12月13日 13時24分10秒

デニスブレインの右手の位置ですが、要は右手でクローズしない奏法なのですね。
これはフレンチ・スクールと同じです。オーブリーの演奏もそうだと思います。
発音とフレージングは違いますが、英仏にはこうした共通点もあり、逆に最近の必ず右手の影響があるそれとは違います。
現在世界共通になっているゲルマニスト奏法、これから脱却すると、案外ブレインの秘密の核を探りあてれると思います。

大山様
要はそうなんです!英ノーザン・オペラのウェブサイトにもブレインの映画(ベートーヴェンのソナタ)を大画面で見ると、右手は普通の位置にあったけれども、ベルの上部に間違い無く右手によるものと思われる擦り傷があった、という記事がありました。 夢中人

275.ヴィオッティ/ヴァイオリン協奏曲第22番イ短調

name: 夢中人 - 2002年12月12日 20時48分57秒

1994年、グラインドボーン音楽祭60周年を記念して出版された「グラインドボーンのレコード Glyndebourne Recorded」に1953年から1955年にかけて行われたオーケストラ録音の頁があります。ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団は1948年から音楽祭のピット・オーケストラでしたので、この時期の録音にはデニス・ブレインがいたと推測できます。

指揮者はヴィットリオ・グイ、オーケストラはロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団ではなくグラインドボーン音楽祭管弦楽団とされました。

モーツァルト/交響曲第39番変ホ長調、K543 1953年3月16日録音
コレルリ/コンチェルト・グロッソ第2番ヘ長調 1953年3月20日録音(未発売)
ハイドン/交響曲第60番ハ長調 Il Disratto 1953年3月20日録音
ロッシーニ/序曲「タンクレディ」 1953年9月18日録音
モーツァルト/交響曲第38番「プラハ」、K504 1953年9月21、22日録音
ハイドン/交響曲第95番ハ短調 1953年9月22、23日録音
ビゼー/子供の遊び 1953年9月23日録音(未完)
グルック/序曲「アルチェステ」 1953年9月23日録音
ヴィオッティ/ヴァイオリン協奏曲第22番イ短調 1953年9月23、24日録音(未発売)
ヴィオッティ/ヴァイオリン協奏曲第22番イ短調第1、第2楽章のカデンツァ 1953年10月12日録音(未発売)
ビゼー/子供の遊び 1955年7月12日録音(ステレオ・テープのみ発売)

モーツァルトやハイドンの交響曲、ロッシーニの序曲などは発売となりましたがモノラルのため長らく廃盤。モーツァルトのふたつは音楽之友社の「レコード芸術名盤コレクション/蘇る巨匠たち」シリーズの1点(ORG 3018)で大変素晴らしい演奏です。

とても珍しいヴィオッティの協奏曲はジョコンダ・デ・ヴィート(1907-1994)が弾いており、この録音の数週間前、ヴィートは1953年のエディンバラ音楽祭で演奏しました。レコーディングにあたったのは、夫でもあったデーヴィッド・ビックネルでしたが録音後、グラインドボーン音楽祭の主催者に宛てた手紙で訳ありのため、この録音のことを触れなかった、といいます。

曲はなんの屈託もなく耳を傾けられる、甘味で心の浮き立つような旋律に溢れた、麗しくも楽しい名曲です。欧米では未発売ですが何故か東芝EMI「ジョコンダ・デ・ヴィートの芸術」(TOCE 9316-24)には入っていてよく聴きます。ヴァイオリンの上手なのはもちろんですが、フルートやティンパニにも心を奪われます。


274.座り位置、右手の位置

name: 夢中人 - 2002年12月11日 11時18分25秒

デニス・ブレインのやること、なすことに新鮮な驚きを覚えることがあります。その一つが座り位置。通常1番奏者は客席から見て右端に座りますがデニス・ブレインは、フィルハーモニア管弦楽団(PO)でもロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(RPO)でも左端に座ります。

例えば1952年秋、ロイヤル・フェスティバル・ホールでのアルトゥーロ・トスカニーニとのブラームス交響曲全曲演奏会。POのホルン・セクションはヒナ段の一番上、左から順にアシスタントのオーブリー・ソンガー、1番デニス・ブレイン、2番ニール・サンダース、3番エドマンド・チャップマン、4番アルフレッド・カーシュー、といった具合。スティーヴン・ペティット著、山田淳さん訳の伝記「奇跡のホルン」P.301にティンパニの振動から遠ざかる為とあり、ティンパニの発する衝撃波から唇や歯を守る意図がありそうです。

また伝記P.128挿入RPOの録音風景写真でPOの場合と同様、デニスの座り位置を確認できますが、もうひとつ驚くのがその右手の位置。通常ホルン奏者は、右手をベルの奥深く差し込み手のひらをベルに当てますが、デニス・ブレインは、ベルの上・外周近くを右手拳の左側で持ち上げているように見えます。彼のよく通る音はこの辺に秘密がありそうですね。

EMIの作曲家自作自演シリーズ、アラム・ハチャトリアン(CDC 5 55035 2、P1994)のブックレットにPOの録音風景写真があり、ここでもデニス・ブレインが左から2番目に座って高々とベルアップしています。私の好きな写真のひとつです。


273.ディッタースドルフ(続)

name:Favart - 2002年12月10日 0時43分23秒

全てモノーラルLPですが実に立派な音でした。ステレオである必要性も感じられないほどです。良い音でCDに復刻してもらいたいものです。せめて夢中人様(木下様)の復刻CDのレベルに・・・。
ブリテンも実は既に聴いています。さすがのDECCA録音です。
音質でなく音楽をじっくりと聴きたいのですが、なかなか時間がなく、また後日お話できればと思います。
ディッタースドルフ PARLOPHONE-ODEON PMB1008(10インチ)
ボイド・ニール   UNICORN UNLP1040
ドボルザーク    HMV XLP30011
ベルリオーズ    COLUMBIA RL3071
それから、海外通販のトラブルの件、NJ州在住の方々の協力を得て、進展がありました。最終的にはまだ決着していませんが、これも後日ということで・・・。


272.UK新譜情報

name:夢中人 - 2002年12月09日 23時54分55秒

Sony Classical.uk11月新譜

ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団/指揮サ−・トーマス・ビーチャム


SMK87780 ヘンデル(ビーチャム編)/組曲「忠実な羊飼い」 1950年4月25日、9月28日録音、ゴルトマルク/田舎の婚礼の交響曲作品26 1952年5月5〜8日録音

SMK87799 シベリウス・ブラームス/ヴァイオリン協奏曲 アイザック・スターン(Vn)1951年11月5〜9日録音

SMK87875 チャイコフスキー/交響曲第2番ハ短調作品17「小ロシア」、組曲「くるみ割り人形」作品71a 1953年12月録音

SMK87876 シューベルト/交響曲1、2、8番「未完成」 1953年12月(1番)、1954年4月28日(2番)、1951年1月15、24日、5月9日、7月11、23日録音(8番)

SMK89430 ディーリアス/幻想序曲「丘を越えて遥かに」 1950年2月7日録音、「海流」 1954年4月28日、12月2、3日←without Dennis Brain ブルース・ボイス、BBC合唱団

今までの情報は107124と125

Testament既発分

フィルハーモニア管弦楽団/指揮ルドルフ・ケンペ


SBT12 1281 モーツァルト/序曲「フィガロの結婚」「コシ・ファン・トゥッテ」「イドメネオ」 1955年12月4日録音、ハイドン/交響曲第106番 1956年6月8日録音


271.ディッタースドルフのパルティータ

name:Favart - 2002年12月08日 22時22分40秒

昨日から横浜の関内で「品川征郎コレクション〜♪蓄音機とSPレコードのすばらしさを求めて♪」という催しが開かれています(レコード芸術12月号のジャパンオーディの広告に載っています)。12/7(土)〜12/11(水)の間、連日、音楽orオーディオ解説者のディスクジョッキーでSPレコードの実演が催されるとのこと。昨日は相沢昭八郎氏の解説でクラシック、きょうは青木啓氏の解説でポピュラー、明日以降、タンゴ、ダンス音楽、ジャズの予定とのこと。
昨日の相沢氏の話で印象に残ったのは「SPのすばらしい音を聴くと、SP以降オーディオに進歩はあったのか?と疑問に思ってしまう。CD(ディジタル・オーディオ)はヴァイオリンなど弦楽器の音を再生しきれていないのでは?今日のショパン弾きはSP時代の演奏家に比べてなんと味のない(心がこもっていない)演奏ををすることか!」といった話です。私も感じるところがあり、思わず拍手をしそうになってしまいました。
現代の演奏家は音楽をする姿勢が20世紀前半とは大きく変わってしまったと思います。最近の演奏家はテクニックは抜群で、昔の名演奏家よりはるかに上を行っていると思います。でも音楽はどうかと考えると、答えはなかなか難しいところにあると思います。
それはさておき、同時にLP、SPの即売会がありブレインのレコードも少し入手しました。それもかなり良心的な価格でした。ディッタースドルフのパルティータ、ボイド・ニールのブランデンブルク(Rec.1956)、ドヴォルザークのセレナーデ、ベルリオーズの序曲集(クレツキ/PO)など。他にもたくさんありましたが、財布がいくつあっても足りません。モーツァルトの協奏曲第4番(ハレ管弦楽団)はSPとLP(コロンビアの10インチ盤)の両方がありました。
ディッタースドルフはとても楽しめました。ホルンの高い音(DBと思います)がソフトで上品で思わずため息がでます。ホルン大活躍です。ブランデンブルクは1945年に比べて演奏が丸くなったような気がします。1945年の方が味わいがあるかもしれません。

Favartさん、また良いレコードを入手されましたね!デニス・ブレインの1956年DECCA録音〜バッハ/ブランデンブルグ協奏曲全曲の第1番(UNLP1040,1041)は1953年のブリテン/テノールとホルン、弦楽器のためのセレナード(LXT2941)と並んで、是非CD化して欲しいものです。戦前の録音はさすがにノイズだらけですが、モノラル最後期のDECCA録音はさぞかし澄み切った音なのではないでしょうか。 12月9日 夢中人

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