130.演奏記録へ疑問あり | |
name: | 夢中人 - 2002年09月09日 19時26分13秒 |
先日アイルランドの方から演奏記録(Concert Register)について概ね次のようなお叱りを受けました。 「下記日付に行われたサー・トーマス・ビーチャム/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(RPO)の地方演奏会は、同じ日にロンドンでフィルハーモニア管弦楽団(PO)の録音があり、デニス・ブレインがRPOにいたとはいえないのではないか、またデニス・ブレインは、公式に1954年4月7日にRPOを退団しており、それ以降のRPO録音に参加しているかどうかは何か証拠が必要だ」との指摘です。 28 May 1947 Dobrowen / Medtner Medtner Piano Conc. 3 Galliera/ Schnabel Beethoven Conc. 5 22 December 1947 Weldon 31 March & 1 April 1948 Dobrowen/ Flagstad Wagner 3, 4, 5, 7, 8, 9, 16 & 18 October 1948 Various sessions at Abbey Road. (RPO on tour Northern England and Ireland.) 3 October 1950 Fistoulari/ Menuhin Paganini Violin C. 9 July 1951 Dobrowen Various items 10 November 1951 Weldon Various items 29 November 1951 Karajan Beethoven 7 12, 14 October 1953 Galliera/ Anda Tchaikovsky 1 Rachmaninov 2 27, 28, 30 April 1954 確かに。デニス・ブレインの演奏記録には、POとRPO、自身の管楽アンサンブルなどの演奏会とレコーディング記録をクロス・リファレンスする必要があります。RPO(ビーチャム)の演奏・録音記録は入れ込んだものの、フィルハーモニアの録音記録は未入力。演奏記録はまとまった形で公になったものは何一つありません。その件で現在のフィルハーモニアに問い合わせても、なしの礫(つぶて)。今後の課題です。 |
129.講演リサイタル | |
name: | 夢中人 - 2002年09月08日 23時07分41秒 |
デニス・ブレインは、実演や放送番組で講演リサイタルを通じて、ホルンの起源や発達の歴史を判りやすく、また楽しく聴衆に説明(演奏)して「ホルンの素晴らしさ」を啓蒙し続けました。弁の無いナチュラル・ホルンでモーツァルトのコンチェルトを吹いたり、有名曲ならずとも、ホルンを語る上に欠かすことの出来ない曲を発掘しては仲間と演奏するさまは、今我々が聴いても大変興味深く、その訥々(とつとつ)とした語りからは、自らの楽器の素晴らしさをシェアしたい、という思いがひしひしと伝わってきます。 スティーヴン・ペティット著、山田淳さん訳の伝記(229頁)を読むと番組の成り立ちや詳しい曲目(下記)を知ることが出来ますが、驚くべきはこうした講演を含むBBC放送のリサイタルが、複数のオーケストラの出番やレコーディングの合間に行われたということでしょう。 「・・あるときデニス・ブレインは、イギリスの地方の管弦楽団に独奏者として出演した。プログラムは3本立てで、はじめと終りが彼の出るモーツァルトとシュトラウスの協奏曲、真ん中がある交響曲だった。その彼にとって用のない交響曲の演奏中に、彼は会場を抜け出して、もよりのBBCの曲から30分のリサイタルを放送したというのである・・」 あちこちで引用されるこの文章は、もともとウォルター・レッグが雑誌グラモフォン、1957年11月号に寄せた追悼文の一節ですが、事実デニス・ブレインの生涯はこういった掛け持ち家業の連続といったものでした。伝記によれば、1957年8月31日、エディンバラにおける最後の演奏会(フィルハーモニア管弦楽団/指揮ユージン・オーマンディ、オール・チャイコフスキー・プログラム)の当日もリハーサル終了後、夜の本番までに講演リサイタルに向かった、と言いますからもう筆舌も及びません。 無用とは思いつつ、フィルハーモニア管弦楽団のディスコグラフィー(John Hunt)と有名な講演リサイタル「初期のホルン」の収録日(1955年7月6日、11日)を付き合せて驚愕しました。 6 July 1955, Kingsway Hall Karajan Sibelius Symphony No.7 Josef Strauss Delirien, Waltz Johann Strauss Tritsch-Tratsch Polka 11 July 1955, Kingsway Hall Karajan Mozart Symphony No.39 6 & 11 July 1955 Lecture-recital on 'The Early Horn' Handel Minuet from Water Music Bach Cantata No.208 'Was mir behagt' for soprano,2 horns,continuo Vivaldi Concerto in F for 2 horns Mozart Concerto No.1 in D K412 played on 1818 Raoux hand-horn Mozart Fragment from Concerto in E K98a (first performance in modern times) Rosetti Finale from Concerto in E flat, Rondo Schubert Auf dem Strom for soprano,horn,and piano Jacqueline Delman(sop), Neill Sanders(hr) Britten Serenade : Prologue(on 1818 Raoux hand-horn) Anonymous Two Hunting Calls (From a 17th-Century Cor de Chasse Treatise) Mozart Duet for Two Horns in B flat K487/12 |
128.デニス・ブレインのブラームス | |
name: | 夢中人 - 2002年09月07日 22時51分56秒 |
いつもブラームスの音楽を聴くと期待や憧れ、歓喜、畏敬とあらゆる感情が湧いてきます。モーツァルトやベートーヴェン、チャイコフスキーも素晴らしいけれども、ことホルン吹きにとって、あらゆる交響曲の中でブラームスの四つ交響曲、中でも2番が最高傑作ではないでしょうか。 デニス・ブレインはこの曲を4度録音しました。即ちクーベリック(1951.9.12&13、未発売)、トスカニーニ(1952.9.29)、カラヤン(1955.5.24&25)、クレンペラー(1956.10.29&30)です。この中で最も心を揺さぶられるのは、やはりトスカニーニのライヴ録音(Testament、SBT3167、P2000)。第1楽章の後半 dolce、24小節にわたるソロにこれまで幾度感動したことでしょう! ところで今日、またひとつ疑問を持ちました。トスカニーニ演奏会のフィルハーモニア管弦楽団のメンバー表を見ると、テナー・トロンボーンが3人、スタンレー・ブラウン(首席)、ジョン・アッシュビー、アーサー・ウィルソン、バス・トロンボーンがフレデリック・マンスフィールドとなっていて、テナーが通常より一人多いのです。 でもこれはアラン・サンダースの解説を読んですぐに判りました。この演奏会にあたって、トスカニーニの希望により弦楽器奏者が増強されたり(その中に若きネヴィル・マリナーがいました)、クラリネットの首席に名手フレデリック・サーストンが招かれたりしたほか、トロンボーン奏者も一名「補強」されていました。それはロンドン交響楽団の1番、ジョン・アッシュビーだった訳ですが、このような事前の対策にも拘らず交響曲第1番の有名なコラールが失敗に終わったのはご承知のとおりです。 この他にも第2交響曲、第1楽章の最後でトランペットが入り間違えたり、第4交響曲では途中でフーリガンが爆竹を鳴らしたり、名手ジョー・ブラッドショーのティンパニが余りにもオンマイクで録られていたり、と傷も多くありますが、それらを補って余りある超絶名演奏。とりわけデニス・ブレインの音楽性は、ブラームスにおいて最も大きく花開くと思うのですが如何でしょうか。 先日ブラームスの四つの歌(作品17)は悲しい、とシッセさんが言いました。若くてシャイなブラームスは令嬢に失恋して余りにも悲しかったようですね、と夢中人も同感。実はこの曲、一昨年ケルさんが送ってきたテープで聴いたのが初めてで、第1曲、デニス・ブレインの吹く音色の素朴さに一発で虜(とりこ)となりました。 |
127.鼻の下 | |
name: | Favart - 2002年09月07日 21時29分33秒 |
が長く見えるシュナイダーと一緒のマエストロ・カラヤンでありますが、その後1977年か1978年に来日したとき、運良く銀座の山野楽器でじきじきにサインをもらう機会を得ました。美しい娘さん2人(高校生くらいで肌がぬけるように白く、とびきりの美人でした)と一緒で、やはり鼻の下が長くご機嫌の様子でした。 その時購入したレコードはBPOとの「新世界」なのですが、あまり聴いていません。(ホルンはザイフェルトでしょうか。) |
126.ロミー・シュナイダー | |
name: | 夢中人 - 2002年09月06日 21時22分13秒 |
KAZUさんの記事中のロミー・シュナイダーで思い当たりました。(写真はヘルベルト・フォン・カラヤン/フィルハーモニア管弦楽団のプロコフィエフ「ピーターと狼」のCD(EMI Electrola、CDZ 2522012、P1989)。右側がドイツ語盤の語りを入れたロミー・シュナイダーです。) まだLPの時代だった頃、レコード芸術のレコード相談室に「フィルハーモニア管弦楽団やロイヤル・フィルのオケマンとしてのデニス・ブレインが聴けるアルバムを紹介して下さい」という難問が出されました。有名な評論家が、クレンペラーのブラームス交響曲全集(特に第1番)、トスカニーニの1952年ライヴ録音によるブラームスの第1番、それに「ピーターと狼」、ビーチャムのワーグナー管弦楽曲集(米CBS、ML4962)の「ジークフリートのラインへの旅」などにブレインが参加している、と回答しました。 ふつうなら大いに納得のところですがが妙にひっかかる記述があってずっと切り抜きを保存していました。「ピーターと狼」は1956年12月22日(キングズウェイ・ホール)と1957年8月28日(EMIスタジオI)で録音されたが、ブレインはデニス・ブレイン管楽合奏団(8月22日、24日)とフィルハーモニア管弦楽団(8月29日〜31日)のメンバーとしてエディンバラに滞在していたので、「ピーターと・・」の2回目の録音には参加していない。またフィルハーモニアも前日までロンドンで録音していたとは思えない。故に2回目の録音は語りの部分だけを行ったと思われる・・・。 大変見事な推測でしたが、後年出たCDやディスコグラフィーにより疑問は解けました。まず2回目の録音は1957年4月28日の誤りで、ナレーションではなくオーケストラの録音だったこと。ナレーションは別に、それも各国語で、即ち英語版はピーター・ユスティノフ、ドイツ語版はソプラノのアンネリーゼ・ローテンベルガー(Electrola)と女優のロミー・シュナイダー(独Columbia)、フランス語版はロベルト・ヒルシュ、日本語版は坂本九、イタリア語版はティノ・カッシーラらが行いました。上記CDブックレットには月日は不明ながら語りは、1957年ケルンで収録されたとクレジットされています。 1995年のクリスマス。EMIエレクトローラがこの「ピータとー・・」を洒落た箱入りで再発したことがあります(CDC 5552682)。新しいブックレットにはロミー・シュナイダーの写真が数枚あしらわれ、1957とかSKANDALという見出しが踊っていました。音楽そのものよりも、女優への思い入れがとても感じられました。ところがなんとCDにはプレス・ミスで他の曲が入っていた為、日本では不良品として回収されてしまいました。 |
125.UK新譜 | |
name: | 夢中人 - 2002年09月05日 19時07分56秒 |
昨年発売分2点記載もれしていました。 ディーリアス 北国のスケッチ(1949.2.14録音)→without Dennis Brain 夏の庭園にて(1951.10.27) アパラチア(1952.10.29、11.6、7、12、13、18) SMK89429 モーツァルト 交響曲第31番「パリ」(1951.3.9、5.9) レクイエム、ニ短調K.626(ビーチャム編)→without Dennis Brain エルジー・モリソン(S) モニカ・シンクレア(A) アレキサンダー・ヤング(T) メアリアン・ノワコフスキー(Bs) BBC合唱団(1954.12.13&14、1956.5.29) SMK89808 モーツァルト 交響曲第35番「ハフナー」(1953.12) 交響曲第40番(1954.4.27) 交響曲第41番「ジュピター」(1950.2.22) SMK89809 以下2点はhttp://www.mdt.co.uk/ からの情報です。 サー・トーマス・ビーチャム、ワーグナーを振る 歌劇「さまよえるオランダ人」序曲(1954.4.16) 楽劇「ニュルンベルクの名歌手」より 第3幕への前奏曲 徒弟達の踊り 名歌手の入場(以上1954.4.17) 舞台神聖祝典劇「パルジファル」より「聖金曜日の音楽」(1953.12) 楽劇「神々の黄昏」より ジークフリートのラインへの旅(1954.4.20) ジークフリートの葬送行進曲(1953.12) 歌劇「ローエングリン」第1幕への前奏曲(1951.12.20) SMK89889 ハイドン 交響曲第93番(1950.6.1) 同94番「驚愕」(1951.7.13&14、10.8) 同103番「太鼓連打」(1951.1.29、2.1) SMK89890 CBS録音に関する記事の追加 ビーチャム「謎」のCBS録音 dbbbs6.html#59 破棄された Philips 録音原簿 dbbbs6.html#60 |
124.UK11月4日新譜 | |
name: | 夢中人 - 2002年09月04日 17時19分53秒 |
Sony Classical.UK よりサー・トーマス・ビーチャム/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団のCBS録音が相次いでCD化。いずれもデニス・ブレイン在籍中の録音です。 ヘンデル(ビーチャム編)/組曲「忠実なる羊飼い」 1950年4月5日、9月28日録音 SMK 87780 シベリウス&ブラームス/ヴァイオリン協奏曲 アイザック・スターン(vn) (シベリウス)1951年11月7、8日 (ブラームス)1951年11月5、6、9日 SMK 87798 チャイコフスキー/交響曲第2番「小ロシア」、胡桃割り人形 1953年12月 SMK 87875 シューベルト/交響曲第1、2、8番「未完成」 (1番)1953年12月 (2番)1954年4月28日 (8番)1951年1月15、24日、5月9日、7月11、23日 SMK 87876 CBS録音に関する今までの記事 dbbbs11.html#107 |
123.オーケストラの楽器 | |
name: | 夢中人 - 2002年09月03日 23時57分42秒 |
さすがにオーブリー・ブレインとデニス・ブレインのSPレコードは、スティーヴン・ペティットのコレクションと同じですので省略しますが、「オーケストラの楽器」(HMV C 3622、1947.5.14、管弦楽団/指揮マルコム・サージェント)は面白いです。デニス・ブレインはソロでヴァーグナー「ジークフリートのホルン・コール」を吹きますが、他の楽器はトランペット:ハリー・モーティマー、トロンボーン:スタンリー・ブラウン、テューバ:ウィリアム・スキャンネルとあります。何れもフィルハーモニア管弦楽団の創設時のメンバーです。 このHMV盤が録音された前年、イギリスで制作されたのが映画「オーケストラの楽器」でベンジャミン・ブリテンがその映画のためにご存知「青少年のための管弦楽入門〜ヘンリー・パーセルの主題による変奏曲とフーガ」を作曲しました。こちらの方は同じサージェントの指揮するロンドン交響楽団。そのまた2年後に制作された映画「バレエのステップ」と一緒に1995年、英Beulahから復刻が出ました(CD:1PD13、Video:RT152)。 ただしケルのリストによれば、「オーケストラの楽器」のレコードはほかにも何種類かあって、各国で教育用として古くから制作されていたことが判ります。例えばフランスでは Les Instruments de l'orchestre, Les solistes des concerts Pasdeloup AZ 51(M6 113378/9) という按配です。 |
122.イベールの協奏曲 | |
name: | Favart - 2002年09月03日 23時32分15秒 |
<Sonoreさま 私の勘違いで失礼しました。「モイーズとの対話」の中では演奏した日付まで出てこないので、danacordのパレー指揮のノクターンとの関係が分らなかったわけですが、夢中人さまに紹介いしていただいた記事で初めて初演が1934.1.4であったことが裏付けられたことになります。DANTEのCD、東芝EMIのCD、HOLOMAN教授のHPでゴーベール/ソシエテ/モイーズで初演となっていますが、これらは間違えであったことになります。 イベールは1935年から1936年にかけて「サキソフォンと小管弦楽のための室内小協奏曲」を作曲していますが、フルート・コンチェルトにそっくりで驚きました。フルネ指揮ラムルー管弦楽団/ドファイエのサキクソフォンの録音があります。 |
121.非公式な初演 | |
name: | Sonore - 2002年09月03日 0時59分00秒 |
url: | http://www.horae.dti.ne.jp/~yagisawa/home/flute.html |
>Favartさま ご無沙汰しております。 言葉足らずでした。 ダナコード収録の録音は実質初演ですが、公式な初演としてはゴーベールと パリ音楽院のオケによるパリでの演奏が記録されています。 しかし、モイーズは当事者ですからパレ指揮によるコペンハーゲンでの演奏 を記憶していてそのことを語ったのです。この二つの初演の記録をおかしい なぁ、とずっと思っていたのですが、先日の夢中人さんの説明で瓦解したと いうわけです。 この時のイベール、聴いてみたいものですが、夢中人さんが引用された資料 の雰囲気ですと、イベールは残念ながら録音されていないと想像します。 |