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第180話「ハリー・ブレック&LMP / モーツァルト / リンツ交響曲」
 英国の First Hands Records からデニス・ブレインがロンドン・モーツァルト・プレイヤーズで吹いているモーツァルトの交響曲「リンツ」が出ました。しかも1954年のステレオ録音。ブルーノ・ワルターの叙情趣味とは違う、力強い演奏です。

 ブレックの40番(1952年録音)は、大変な名演奏だそうですので、このレーベルが出してくれることを期待しています。







2012年05月23日 21時13分19秒

第179話「ジョージ・ウェルドン&PO / エルガー / エニグマ変奏曲」
 1963年、南アフリカはケープタウンで客死したイギリスの名指揮者ジョージ・ウェルドンがEMIのプロデューサーで親友のジョン・カルヴァーハウスとの名コンビで残したエルガーの名作。1953年のモノラル録音ながら2008年のCD化はとても良い音がします。
2012年05月16日 22時26分51秒

第178話 BBC放送番組「事件の核心」
 大英図書館のショップで売られているイーディス・シットウェル(1887-1964)のTHE SPOKEN WORD (NSACD 39) を落手しました。

 CDには1956年6月21日、オールドバラ音楽祭における「事件の核心」と題する一連の詩の朗読が収録されており、1999年にBBCが出したベンジャミン・ブリテンのCD(BBCB 8014-2)と合わせて番組の雰囲気を感じれるかなと。

 その日のシットウェルの朗読とブリテンの音楽は、同一の詩によるものではなく、朗読に演奏を挟むものだったようです。
■ シットウェルの朗読

 1. 老女 1
 2. 老女 2 (収穫)
 3. 最も美しい陰
 4. 赤黄色の髪の若者
 5. うた(今や運命は尽き…)
 6. 新たな日の出への挽歌
 7. 祷(抜粋)
 8. 休日
 9. 薔薇のカンティクム

■ ピアーズ、ブリテン、ブレインの演奏

 1. そして雨は降り続ける
 2. 火
 3. それで、闇の中から

 BBCB 8014-2には、「そして雨は降り続ける」だけが収録されました。
2012年04月11日 23時19分41秒

第177話「1951年1月22日、西独ケルン」
 独 Profil の Günter Wand Edition Volume 17 落手しました。知られざる現代音楽に挟まれた1951年1月22日(これまで1月23日とされていた)、ギュンター・ヴァント指揮ケルン放送(WDR)交響楽団とのモーツァルトの第3番です。きびきびとした速いテンポで進みますが、ブレインはいつものように全く破綻がありません。拍手の無いスタジオ録音で、伴奏のクラリネットやファゴットが明瞭に聞こえます。

 さて1月22日にはヨーゼフ・カイルベルトの指揮で2度目となるヒンデミットの協奏曲を録音したとされていますが、ギャンブル&リンチのディスコグラフィーでは WDR のアーカイブにはもう保管されていないとあります。

 また商業録音はブレインと作曲者自身の指揮による録音が最初で、フランクフルト放送交響楽団のマリー=ルイーズ・ノイネッカーが2番目と思っていましたが、Nixa レーベルによるフランツ・コッホ(1888-1969)とウィーン交響楽団が最初だそうです。知りませんでした。
ノイネッカーの演奏には第3楽章にオリジナルにあった朗読が入ります。
2012年04月01日 19時01分04秒

第176話「ザ・フレンチ・ホルン」
 去る2月25日、日本の歴史的録音復刻レーベルの雄、グリーンドア音楽出版からリュシアン・テヴェの名盤 The French Horn (+ The Bassoon)が発売されました。

 音源を提供された木下直人さんに背中を押して頂き、初めて解説文を書きました。拙文はともかく、美しいオリジナル・ジャケットと素晴らしい音が再現されておりますので是非お買い求め下さい!
2012年03月18日 20時45分51秒

第175話「レコードの不可解な改変」
RVC RCL-3319 ギャンブル&リンチ両氏の Dennis Brain A Life in Music のディスコグラフィーに1953年5月4日のRIAS放送交響楽団とのモーツァルトの第3番のLPの終楽章に「他の奏者による他の録音からの知られざる継ぎ合わせがある」とあります。わが国では1984年に発売されました(RVC RCL-3319、原盤=伊 Longanesi & Periodici)。

 他の奏者の録音とは、どうもアラン・シヴィルの最初の録音のようです。
2012年03月04日 21時07分02秒

第174話「メットの歌姫、エレノア・スティーバーと1947年エディンバラ音楽祭」
 デニス・ブレイン時代のロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(RPO)が、グラインドボーン音楽祭のピット・オーケストラとして「グラインドボーン音楽祭管弦楽団」の名前で演奏したことはよく知られています。1947年の第1回エディンバラ音楽祭でそのグラインドボーン・カンパニーのオペラ「フィガロの結婚」と「マクベス」が掛かっていたことをご存知でしょうか。

 当初予定のジョージ・セル(!)がキャンセルとなって、戦前プラハ・ドイツ歌劇場でセルの副指揮者だったワルター・ジュスキント(1913-1980)が代役に。音楽祭のあと、「フィガロの結婚」で伯爵夫人を歌ったアメリカのソプラノ歌手エレノア・スティーバー Eleanor Steber(1914-1990)がフィルハーモニア管弦楽団とモーツァルトのオペラ・アリアを録音することになりました。

 1947年9月17日、アビーロード・スタジオに到着したスティーバーは、気分が優れないせいかエディンバラの舞台では大受けを取った「フィガロの結婚」の有名なアリア「愛の神よ、みそなわせ」 Porgi amor と「楽しい思い出はどこへ」 Dove sono のレコーディングが不調で、遂には「歌う気になれないの」と言い出す始末。

 ジュスキントは何とかセッションを成立させようと「じゃあ何を歌いたいの?」と尋ねたところ、スティーバーがしばし考えて選んだのがシャルパンティエの歌劇「ルイーズ」から「今日からは」Depuis le jour とグラインドボーンとは全く関係の無いフランスもの。

 ほどなくオーケストラのパート譜も見つかって、一発オーケーの素晴らしい録音となりましたそうです(↓)。





 続いて収録されたビゼーの歌劇「カルメン」のアリア「なんの恐れることがありましょう」Je dis que rien ne m'epouvante は、ギャンブル&リンチ両氏による新しい伝記ディスコグラフィーに掲載されたブレインのホルンの新たな「聴き物」です。

 「マクベス」の方は全曲の録音が計画されましたが、セルそして代役のトゥーリオ・セラフィンも来れなくて中止に。替わりにマクベス夫人役のマルゲリータ・グランディ(1894-1972)が第4幕「夢遊の場」をロンドンでサー・トーマス・ビーチャム指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団と録音しました。最後の非常に高い変ニ音をドロシー・ボンド(1921?-1952)が代唱したことが知られています。
2012年02月25日 14時44分23秒

第173話「スラブ舞曲(全曲)」
 英国 Metronome Recordings から黄金時代のフィルハーモニア管弦楽団の復刻CDが出ました。ニコライ・マルコが1953年4月末から5月初めにかけて第1集と第2集を2枚のLP(HMV CLP 1019/20)に録音したもの。CDでは1枚に第1番から第16番がトラック番号どおりに並んでいます。

 第16番の最初でヴァイオリンの甘い旋律にデニス・ブレインのホルンが被さるところが絶妙。本場チェコ・フィルハーモニーの名手ミロスラフ・シュテフェック(1916-1969)やズデニェク・ティルシャル(1945-2006)でもこうはいかないでしょう!
http://www.metronome.co.uk/
2012年02月02日 22時09分07秒

第172話「軽騎兵」
 1953年3月7日。午後6時半からのアビー・ロードでのフィルハーモニア管弦楽団のレコーディング。開始まであと2時間というところでプロデューサーのデイヴィッド・ビックネルが行けなくなり、若いブライアン・カルヴァーハウスに交替。初プロデュースとあって、元気なところを見せようと急遽スタジオのカーテンを取っ払って、指揮者のジョージ・ウェルドン(1908-1963)と打ち合わせ冒頭のファンファーレで金管奏者を立ち上がらせることにしました。結果は上出来でビックネル曰く「我々はもっとこんなレコーディングをしなきゃならんな、カルヴァーハウス君!」

(ブライアン・カルヴァーハウス「プロデューサーの肖像」、ICRC1995年9月号より)


Special thanks to CONN1974

 ウェルドン/フィルハーモニア管による珍しいメットネルのピアノ協奏曲第1番(1947年録音)がこちらで公開されています。
2012年01月28日 10時58分40秒

第171話「3番のカデンツ」
 ブレインはモーツァルトの協奏曲第3番の録音を6つ残しています。その幾つかを聞いた方は、ヘルベルト・フォン・カラヤンとの第3番のカデンツが他の5つと違っているのに気付かれたと思います。

 つまりカラヤン以外(全てライブ録音)は、いずれも変ホ長調の音階で最高音のE♭に上がる華やかなものですが、カラヤンとのものはそれに比べるとやや地味。変ホ長調でありながら、譜面上の最高音は実音Cでカラヤン/ブレインのカデンツはあたかもそれに合わせた形になっているのです。

 現在ではモーツァルトの4つのホルン協奏曲は番号順ではなく2(1783)→4(1786)→3(1787)→1(1791)の順で作曲され、3番が作曲された1787年当時、イグナーツ・ロイトゲープは既に55歳でA以上の高音域に難があったとされています。

 ブレインが生きた時代には、上記のことは知るよしも無かった筈ですがブレインが何か感ずるところあって、レコード録音ではそれまで吹き慣れたものと違うカデンツを吹いたのだとしたらと想像を逞しくしています。

 因みにカラヤンの再録音のカデンツは、ソリスト、ゲルト・ザイフェルトの同僚マンフレート・クリヤーによるものでシンプルなブレインと比べると長くて技巧的なものとなっています。
デニス・ブレインのモーツァルト/ホルン協奏曲第3番変ホ長調 K.447

1. 1951.1.23 ギュンター・ヴァント指揮ケルン放送管弦楽団
2. 1952.4.20 ハンス・ミュラー=クライ指揮シュトゥットガルト放送管弦楽団
3. 1953.4.3 パウル・ファン・ケンペン指揮ベルリン放送管弦楽団
4. 1953.5.6 ハンス・ロスバウト指揮南西ドイツ放送管弦楽団
5. 1953.7.30 サー・マルコム・サージェント指揮BBC交響楽団
6. 1953.11.13 ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮フィルハーモニア管弦楽団
2012年01月22日 21時25分05秒

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