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第200話「ICON コンスタンチン・シルヴェストリ」
 ボーンマス交響楽団が一番光り輝いていた1960年代。首席指揮者のシルヴェストリとの初録音―チャイコフスキーの1812年、イタリア奇想曲、エフゲニー・オネーギンのポロネーズ―は、スペクタクルなサウンドを生み出すためにマイクロフォンの特殊な設定を含むあらゆる人工反響的なテクニックと録音テープへの夥しい加工が施された。録音会場となったボーンマスのウィンター・ガーデンズにいわゆる音響のエキスパート達が仕事に取り組み、サウンドはとても乾いた感じとなった。

 最後の録音はエルガーとヴォーン・ウィリアムズという生粋の英国音楽。録音場所は歴史あるウィンチェスター教会が選ばれた。初日タリスの幻想曲が、2日目「スズメバチ」序曲と「南国にて」が収録されたものの、誰もシルヴェストリが病気で力を使い果たしているのを知らない。教会での録音は立派なものだったにも拘わらず、ウィンター・ガーデンズでも再度収録された。

 シルヴェストリは英国音楽を指揮するのに何の抑制も既成概念もなかった。それに向き合い、スコアを見て「かく演奏されるべきだ」と感じ、普通なら人に聞くようなことを望まなかった。ただ音楽の首根っこを掴んで、震わせる。彼はシュトラウスとワルトトイフェルなどのワルツ集の録音を断った。ワルター・ジュスキントが代わりの指揮者となった。

(ICRC1995年秋「プロデューサーの肖像/ブライアン・カルヴァーハウス」より)

 レコード芸術1959年2月号の海外LP試聴記にデニス・ブレインのいたフィルハーモニアとのチャイコフスキー5番が取り上げられていて、「ホルンのソロも一層美しいソロが望まれる」とあるのはちょっとご愛嬌。

 以前出たボックス(Disky DB 707432)にはなかったORTFの「新世界」やパリ音楽院の「幻想」、ウィーンフィルのショスタコヴィッチの第5などを含む。

2013年12月28日 20時25分45秒

第199話「ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団の新譜2点」
 木下直人さんがグリーンドア音楽出版からパリ・ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団(Musique de la Garde Repubulicaine)の新譜を2点出されました。

 ギャルドの日本公演は、NHKの1986年ライブDVD&1961年ライブCD2枚をもってその全容が明らかにされたと思っていたのに、新宿厚生年金会館でのライブ録音が別にあったとは本当に驚きました。兎に角ブーティュ渾身の「粉屋の娘」冒頭のソロはこのディスクでしか聞けません!



 こちらはウェーバーのクラリネットのためのふたつの協奏曲が聴きもの。ソリストはギャルドのクラリネット・パート。これってびっくりですよ。ケルさんのレコードが音源に使われています。







AA-4671 私が吹奏楽を始めた頃(1970年代)、コンクールの自由曲の選曲には「ギャルド」の影響がまだまだ強くレコードも随分聞きました。東芝音楽工業の17センチLPのジャケットには、弦楽器奏者を追加したオーケストラのギャルドの写真が載っていましたが、演奏はそれはそれで素晴らしい吹奏楽のもの。グリーンドアの新譜には、今度は正真正銘オーケストラのギャルドの録音が2曲入っています。

 以前木下さんが語られた数々の夢は、次々と現実となっても、飽くなき探求はまだまだどこまでも続きます。


2013年12月02日 22時46分03秒

第198話「スタンフォード大学 ウィリアム・C・リンチ デニス・ブレイン・コレクション」
 「デニス・ブレイン―その音楽と生涯」の共著者、ウィリアム・C・リンチ氏が、地元カリフォルニア州、スタンフォード大学内のブラウン音楽センター録音保管所に積年かかって収集したデニス・ブレイン・コレクション(12箱!)を寄贈。先週よりその詳細が下記サイトにて公開されています。

Stanford University - The William C. Lynch Dennis Brain Collection
2013年11月23日 09時18分42秒

第197話「坂本直樹さんを偲んで」
 今日坂本直樹さんの奥様から坂本さんが亡くなられたことをお知らせ頂きました。坂本さんとは「憧れのデニス・ブレイン」立ち上げ当時(1999年)からの「掲示板」を通じたお友達でした。癌を克服されたご経験から、会いたい!と思う人には万難を排して会うことにされたとかで、2004年、はるばる佐倉から明石に来られたのが最初の対面でした。

 その際、デニス・ブレインの生涯「無限の走路」がご自分と奥様の分として2冊あるからと、そのうちの1冊を気前良く私に下さいました。ほかに千葉馨さんのインタビューの載ったバンド・ジャーナル誌の別冊も。ともかく私のブレイン・コレクションのあちこちに空いた穴を次々と埋めて下さいました。本当にありがとうございました。

 2007年のブレイン没後50年には、愛器メーニッヒを提げて明石での Salute to Dennis Brain の初演奏に参加されました。(写真左が私、右が坂本さん)この時の模様は英国ホルン協会誌「ホルン・プレイヤーズ」に日本の「デニス・ブレイン・ホルン・クラブ」と紹介されてお互いにとても名誉に感じたものです。

 坂本さんは、若い頃にロンドンはコヴェント・ガーデンにあったパックスマン・ホルン店にも行かれました。いつかきっとかの地へご一緒したいと思っておりましたのに、それも叶わなくなってしまいました。ご冥福を心からお祈り申し上げます。
2013年10月23日 21時54分33秒

第196話「くもとちゅうりっぷ」
 先日新聞で、わが国初めてのミュージカル・アニメーション「くもとちゅうりっぷ」(1943)を松本零士(b1938)と手塚治虫(1928-1989)のご両名が偶然にも同じ明石の映画館で見ていたという記事を見ました。

 松本零士さんはデニス・ブレインの生涯「無限の走路」(1977)を描かれましたが、明石にご縁があったとは知りませんでした。私は以前この漫画が見たくて見たくて仕方がなかったところ、坂本直樹さんがお持ちの2冊のうち1冊をわざわざ明石の拙宅まで持ってきて下さったのも今を思えば奇遇なことです。
2013年10月01日 20時16分05秒

第195話「デニス・ブレインの放送(Dennis Brain Broadcasts)」
 ホームページのメニューに Dennis Brain Download を加えました。そのひとつ Dennis Brain Broadcasts は、スティーヴン・ギャンブルさんが新しい伝記に収録出来なかったデニス・ブレインのラジオ放送出演記録を年代順に纏めたもので、1937年から1957年にかけてのマイクロフィルムによる雑誌 Radio Times の記事をベースとし、BBC 文書保管所(Written Archives)に保存されている放送予定や契約書などを加味して作成された労作です。
 
 ギャンブルさんはこのリストの公開を、さらなるデニス・ブレインの放送録音のCD化に繋がるかもしれないという気持ちから決められました。
 もし興味がおありでしたら、是非印刷して読むことをお勧めします。

 例えば、1989年発売の AS Disc 356 で初出された R.シュトラウスの第2番(リー・ジェンキンス指揮 BBCウェールズ管弦楽団)は、1951年2月5日、午後12時45分から1時45分の BBCライト・プログラム「コンサート・アワー」で放送された。そのリハーサルは、午前10時、チャールズ通りのカーディフ放送局で行われた、ということが判ります。
 Dennis Brain Download にはロバート・マーシャル教授のディスコグラフィー Dennis Brain on Record もあり、二人の米英のブレイン求道家によるブレイン・ファンへの贈り物に心から感謝しつつ公開しています。
2013年02月18日 20時25分32秒

第194話「真夏の夜の夢」
Columbia 33CX 1174 フィルハーモニア管弦楽団とパウル・クレツキが1954年2月に録音したボロディンの2番やマンフレッド交響曲、ヨハンナ・マルツィのブラームスの協奏曲などはTestamentが早くにCD化しましたが、デニス・ブレインの独奏で有名な「夜想曲」を含む劇音楽「真夏の夜の夢」だけカタログに載っていませんでした。

 昨年、BBCラジオ・クラシックスで知られる英国ピクウィック・グループがオリジナル・ジャケット・デザインでCD化(IMP Classics 782062)しました。(写真はLPのジャケット)

 期待を持って入手しましたが、LPから板起こしされたもので、音はいまひとつ。ちょっと残念です。
2013年02月14日 21時26分37秒

第193話「アルチェオ・ガリエラの新世界」
 1953年10月録音のドヴォルザークの「新世界から」(Columbia 33SX1025)。竹内喜久雄さんがその著書「コレクターの快楽」(1994年洋泉社)でモノラルLP時代でトップクラスの演奏と紹介されました。

 私は何度か Testament にCD化のリクエストを出しましたが遂に実現しなかったものです。Youtubeに気前よくアップされているのを見つけました。

SIDE A


 第4楽章の終わり、ハイEまで上がるブレインのソロに続くフィルハーモニア・ホルン・セクションによるファンファーレ、本当に素晴らしいですね。

SIDE B
 
2013年01月27日 19時10分11秒

第192話「トライアンフ TR2」
Triumph TR2 もう半月ほどもたってしまいましたが、元日のウィーン・フィル・ニューイヤーコンサートにトライアンフ・ロードスター(TR4)が出演していました。動く姿を目にすると得も知れぬ感慨が沸いてきました。

 ご承知のように、デニス・ブレインのは、この二つ前の型の TR2 で TR4 の洗練は無いものの、丸い目とぽっかり開いた口がウーパールーパーのようで何とも愛らしい車です。
2013年01月14日 21時27分25秒

第191話「アレキサンダー B♭ シングルホルン 90」
 ペティットの伝記では、事故でくちゃくちゃになったのをパックスマンが見事に復元したものの、デニス・ブレインのアレキサンダーB♭シングルホルンは言わば悲劇の象徴のようでした。ギャンブルとリンチ両氏による新しいブレイン伝はその製品番号(モデル)を「90」と明記しました。

 アレキサンダー社のウェブサイトで1番管の形状がやや違いますが、今尚ラインナップされている90を見ることが出来ます。

アレキサンダー B♭ シングルホルン 90
2012年12月18日 23時24分05秒

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