1955年7月23日BBC第3放送

「初期のホルン」〜講演リサイタル(抜粋)

出 演  :  デニス・ブレイン、ニール・サンダース(Hr)*、ジャクリーン・デルマン(Sop)**
         ハリー・ニューストン指揮ハイドン管弦楽団
演奏曲目:
ブリテン セレナードからプロローグ〜1818年製ラウー(ナチュラル・ホルン)による演奏
モーツァルト ホルン協奏曲第1番 ニ長調 K.412〜同上
モーツァルト 断章ホ長調 K.494a(K.Anh98a)
不詳 2種類の狩のホルン・コール *
モーツァルト ホルン二重奏曲 変ロ長調 K.487/12 から *
バッハ カンタータ第208番「狩だけが私の喜び」〜ソプラノ、2本のホルンと通奏低音 *、**
ヘンデル 「水上の音楽」よりメヌエット *
ヴィヴァルディ 2本のホルンの為の協奏曲第1番 ヘ長調 PV.320 *
ロゼッティ ホルン協奏曲 変ホ長調 フィナーレ
シューベルト ソプラノ、ホルンとピアノのための「流れの上で」 D.943 **

演奏 今お聞きになった楽器は、1818年から現代のものまでにわたっています。名器もそうではないのもさまざまです。最初のは最も新しく安いもので、2番目のは1818年のフレンチ・ホルンでベルに模様がついており、3番目のは私が使っているアレキサンダー製です。最初の楽器についてですが、これを使ったのは、穴の空いた管ならどんなものでも音が出せることを示したかったからです。もうひとつのことがこの放送ではポイントになるのですが、どこの庭でも手に入る道具を使うというのも悪くないと思いますし、それを使った演奏も放送されたことがないでしょう。つまりこの水まき用のホースです。もう一度聞いてください。演奏

ふつうの楽器より音がはずれていますが、音程の比率は同じで、これは倍音と呼ばれています。でも正確ではありません。ハンド・ホルン、角笛などのバルブの無い楽器、あるいは水まき用のホースで音程をを正しく出すためには、呼吸法と筋肉の緊張が必要です。音階吹奏

お聞きになったように、音が高くなるにつれて音の間が狭くなります。そして現在の我々の耳には音程が狂って聞こえます。音階吹奏

現在のテクニックは、イントネーションを正すのではなく、ハーモニーを重視するのです。ベンジャミン・ブリテンの「セレナード」では、奏者は音程のはずれた音が要求されていて、それによって六つの詩の自然な色彩を表現するように書かれています。では「セレナード」のプロローグを1818年のハンド・ホルンで吹いてみます。演奏

(中略)

200年前には、ホルンはこんなふうに演奏されていたに違いありません。次に17世紀後半の狩のラッパを2種類吹いてみましょう。狩の時のラッパの音だけでなく、その意味についても書かれているフランスのトロンボーンのためのメトードから採られたものです。演奏

次にはもっと新しい時代の洗練されたホルンの使われ方をご紹介しましょう。モーツァルトの「12の二重奏曲集」の最後の曲です。この二重奏曲で興味深いのは、中に24の倍音(ハーモニックス)を含む楽章があることです。高音Cの上のGまでです。つまりバセット・ホルンを想定して書かれたのではないかと思われます。演奏

(後略)

訳文:「デニス・ブレインの芸術」(東芝EMI、CE25-5896〜5906、P1989)
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