第3幕、第2場、月夜のウィンザーの森に響く狩りのホルン。
文豪ゲーテの不朽の名作への誘(いざな)い。新潮文庫ファウスト(一)。
1954年7月24日、カラヤンのアルバム「オペラ間奏曲集」の録音でデニス・ブレインはこの曲のホルン・ソロを吹き、マスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲ではオルガンを弾きました。
どれも格好の良いホルンのソロがあるのにビーチャムがヘンデルの「水上の音楽」やシュトラウスの「ドン・ファン」と「ティル・オイレンシュピーゲル」、シベリウスの5番など得意とする作曲家の代表的名曲をレコードに残さなかったのは何故?でもまいいかっ、カラヤンがそんな美味しいところを全部抜け目なく録音してどれもがピカ一の名演なんだもの!
デニス・ブレインとフィルハーモニアとロイヤル・フィルハーモニーの花形奏者達によるリサイタルCD。ロマンの香り溢れるシューマン、古典的スタイルのベートーヴェン、超絶技巧のデュカなどプログラムの対比も鮮やか。
デニス・ブレイン@POでストラヴィンスキーを聴ける無上の喜び。「春の祭典」(Testament SBT 1076)も。
なんという寂寞感!なんという密やかさ!冒頭のデニスのホルン、天才のみ成せる技。
こういう妙な録音を持ち出してきてすみません。でも楽しくてハッピーな演奏なんですね、これが。1947年、EMIへのスタジオ録音。CD化はうまくいっていて、出てくる音は温かいしかなり細かいニュアンスまでも伝えている。 やはりこの名物指揮者、抜群の音楽センス、キャラクターの持ち主だった。エレガントでしかも生き生きしている。・・・
(藤野俊介/レコード芸術1995年9月号「CD時代の名曲名盤NEXT100」)
1997年、ハワース村を訪れました。B&Bのご主人の勧めもあって、翌朝「嵐が丘」のモデルと信じられていた農家の廃屋を目指しました。ヒースの茂みを足下に見つつ、遥か彼方にゴマ粒のように見える家に向かっていくつもの石壁やゲートを越えて。途中「ブロンテの滝」や「ブロンテの橋」「ブロンテの椅子」などで遊びながら、ヨークシャーの広大なムーア(荒地)を行くこと11キロ。ついに迫りくる嵐が丘。足がどんどん速くなったことを覚えています。
故三浦淳史さんが著書『レコードのある部屋』(湯川書房、1979年)で感無量と書かれた第2部への前奏曲「山上にて」(1948年録音)。東芝EMIの「デニス・ブレインの芸術」にも収められていますが、これはそのCBSによる全曲録音(1952年、1953年)です。 ニーチェの『ツァラトゥストラはかく語りき』からのフリッツ・カッシラーが選んだ詩をもとにしたこの曲を、果たして全て理解できる日が来るのだろうか、といつも思います。
このオペラを聴いて高校の世界史で習った「囲い込み運動」とイギリスのカントリー・サイドで見たどこまでも続く石壁が頭の中で符合しました。原作のゴットフリート・ケラーの小説「村のロメオとユリア」は岩波文庫のひとつ星でしたが現在は絶版。図書館か古本屋で捜しましょう。
知られざる名曲を振れば天下一品。ビーチャム生誕100年記念LPセット(World Records SHB100,1979)の中の1曲。
レジナルド・ケルのベルカントなクラも聴きもの。トルトゥリエ盤(EMI CMS 7 64069 2)、シュタルケル盤(EMI CZS 5 68745 2)も。
ついに出ました1952年秋、トスカニーニ/フィルハーモニア演奏会ライヴの正規発売。1日目は、ちょっと緊張気味でしたが、2日目の1曲目、ハイドン・ヴァリエーションで爆発しました。おまけに3曲目、交響曲第4番ではフーリガンによる花火も爆発しました。
懺悔します。このBBC盤が出るまではペーター・ダムのものがベストと思っておりました。どうかお許し下さい。そのディテールが明らかになった今、改めてあなた様の偉大さを知りました。ほかに涙無しには聴けぬ事故1週間前の1957年8月24日、エディンバラ音楽祭でのライヴ、デュカ/ホルンとピアノのためのヴィラネルなど。
第1楽章、冒頭のホルン ―― 山の頂上から新しい世紀の夜明けを告げる声。
エネルギッシュな第1楽章、とびっきりおすましの第2楽章、優雅なガヴォットの第3楽章、ビートでノリノリ第4楽章、何れも山椒は小粒でもピリリと辛いヴィンテージ物。ホルンはパパパパ(刻み)とパン、パンッ(決め)とパーーーッ(伸ばし)だけなんだけど、それがまた良いんだなあ。
当時ウィーンで活躍していたクリップスとソプラノの名花、シュワルツコップ、ゼーフリートの二人がフィルハーモニアと織りなすメルヘンの世界。緩急自在の棒に音楽が弾み、そして息づく。なかでも光るデニスの妙技。
第3楽章スケルツォ、何度聴いても心ときめくホルン・トリオ。それもデニス・ブレインが吹いているんですもの。上品かつ端整で、当世流行の軍団的大音響の噴出とは違います。
今日のコンサートはビーチャムのビートの効いたベルリオーズの序曲で「さあ、はじまり、はじまり!」
1954年録音。「金鶏」や「サルタン大帝」と並ぶロシアものの人気曲ですが不思議と旧ソヴィエト連邦より西側のオーケストラのレコードに良いものが多いですね。ニコライ・マルコ盤(1955年録音、EMI CZS 5 75121 2 P2002)もあります。
1949年録音。ソロに出てくる三連符ひとつにも天才を感じる。誰にも真似の出来ない最高の演奏。ブレイン本人による1956年録音(Testament SBT 1062)も超えられない。
この演奏、冗談じゃなくてマジ。音楽のキャタストロフィーに恐怖。
1990年のアルベールビル冬季オリンピック、伊藤みどり選手が出だしをラフマニノフのピアノ協奏曲第1番で始めて、緊張一杯のなか尻餅をつきながらも第2番のサビのところで三回転半ジャンプを決めたのには感動しました。1945年英映画『逢びき(原題 Brief Encounter)』のホルン・ソロはこれまたデニス・ブレイン。
シルヴェストリのもう一つの超弩級名演。ただならぬ雰囲気漂う序奏からぐんぐん加速、ファンファーレの金管の咆哮、深く呼吸する中低弦、心地よいホルンの響き、密やかな木管ソロ。嵐の前触れから躍動する管弦楽はやがて沸騰、息も継がせずコーダに雪崩れ込む。叩きつけるような終結の和音。これは全編興奮のドラマ。
サー・トーマス・ビーチャムお得意のシュトラウス。第3曲「剣術の先生」でのデニスの吹くF管ラウーの溜めの効いた肉厚の音に圧倒される。モリエールの原作(岩波文庫)も併せ読むと面白さ倍増。
ご存知、ジークフリートのホルン信号はこちら。
もうひとつの「ホルンのジークフリート」渾身のコール。ほかに歌劇「さまよえるオランダ人」序曲、「ニュルンベルグの名歌手」の音楽などで炸裂するロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団のホルン・セクション。これにて独襖系オケによるワーグナー名曲集不要の一枚。
この1947年10月28日録音と1947年9月22日録音(Somm BEECHAM 9、P2001)の勝負は物言いの付いた結果、おしまいの閃光のごとき1番ホルンの最高音を捕えたEMI盤の勝ちッ!
冬の定番音楽をかくも格調高いデニス・ブレインのソロで。
またダブっているじゃないの!と言わないで下さい。良いものは、いくつあっても良いんです。デニス・ブレインは3回「スケートを・・・」を録音しました。1回目(1950年)がランバート、2回目(1953年)がカラヤン、3回目(1956年)がクリップス。あとCDで出ていないのが、なんとカラヤンのもの。お願いEMIさん!いつか出して下さいね。
鶴首して待ったモノラルの「フィルハーモニア・プロムナード・コンサート」発売日にスッ飛んで買いに行きました。夢中人のお願いを聞いて頂いた東芝EMIさん、本当にありがとうございました。「スケートをする人々」トラック1です。
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Last Updated 2012/12/01