Y 忘れざるルシアン・テーヴェ Z
掲示板(181-190)


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190.トゥールーズ木管五重奏団、今昔

投稿者:夢中人 - 2001年10月14日 19時12分43秒

トゥールーズ木管五重奏団のCD(FONTEC FOCD3181)聴きました。メンバーは全員、国立トゥールーズ管弦楽団の首席奏者で、1992年初来日の際の録音です。

オーボエ奏者はピエール・ピエルロ、クラリネットはジャック・ランスロのお弟子さん、ホルンのダニエル・ドールDaniel Daureは、トゥールーズ国立音楽院でルネ・ヴィダロ、パリ国立高等音楽院でジョルジュ・バルボトゥに学び、それぞれホルン科を審査員全員一致の一等賞で卒業、とありますから全員フランスの名管楽器奏者を受け継ぐ次世代の逸材という訳です。

曲はルーセルのディヴェルティメント作品6、ミヨーの《ルネ王の暖炉》、プーランクの六重奏曲、ダマーズの17のヴァリエーション、イベールの3つの断章とありますから、ちょうど30年前、来日して上野の文化会館小ホールで日本コロンビアに素晴らしい録音を残していった古いトゥールーズのメンバーによる録音と同じような曲目。

パリから離れた地方都市のオーケストラのメンバーに、ひょっとすれば伝統のフレンチ・スタイルが少しでも残っているのではないか、という一縷の望みを抱きました。一聴して、演奏は達者なものの、期待すること自体、詮無いことでした。ミヨーやイベールならデニス・ブレイン管楽合奏団の演奏もあります。ブックレットの写真にあるホルン奏者は、ロータリーヴァルヴのダブル・ホルンを吹いて、しかもとても猫背。これでは明るい音はとても出せません。

唯一の救いはジャン=ミシェル・ダマーズ(1928年、ボルドー生まれ)の曲が入っていること。バッソン奏者、クリストフ・ヴィヴィエスの名人芸が素晴らしいです。

189.酒酔い話「初期のホルン」

投稿者:夢中人 - 2001年10月13日 17時36分27秒

Y 「ベートーヴェンの頃のホルンゆうたら、どんなんやったんやろうなあ」
O 「ヴァルヴ(弁)の無いヤツで、ゲシュトップゆうて朝顔に右手を突っ込むと音程が半音上がるんですわ」
Y 「ホンマかいなー、面白(おもろ)いなー」
O 「昔のホルン奏者は、いろんな調のクルーク(替管)を一揃え箱に入れて、重たいのに持ち歩いたそうですわ」
Y 「それで曲によって差し替えた訳やな。忙しい話や。」
O 「同じ曲をいろいろな調のホルン奏者で吹いたんですわ。」
Y 「よう頭に鬘(かつら)つけて時代考証された演奏やっとるけど、ヴァルヴの無いホルンで半音上げる瞬間、見てみたいもんやな」
O 「曲の途中で管をカチャカチャ替えるとことかね」
I 「だいたいヴァルヴちゅうのは、いつ頃出来たんですか?」
O 「ベルリオーズの頃ちゃうか。幻想交響曲とか」
I 「ホンマですか」
ピストン付きホルンは、調性(キー)を瞬時に変化させる機能を持つ特別なメカニズムにより、開放音による全ての音を出すことが出来る。かくしてピストンの使用はFホルンをEホルン、或いはE♭ホルンに変換する(中略)それゆえ、ひとつの調性の開放音に他の調性が加えられた結果、開放音による完璧な半音階が可能となった。

最低音のCから上の自然低音には、かなりの空白があって、このシステムはそれらを埋めることが出来るため、特に2番ホルン奏者にとって都合が良い。しかしながら、ピストン付きホルンの音色は、普通のホルンと少し違っており、そのために全て置き換わりえない。私は、ほとんど別の楽器のように取り扱われるべきと考える。特によく響く、力強い低音(とてもよく似ているとされるテナートロンボーンの低音ほどには強くないけれども)に相応しい。また、特に主に中音域での旋律を上手く演奏することが出来る。

ピストン付きホルンの最善の調性は(曲の正確な記譜に全く申しぶんがない唯一のもの)いくつかの中間の調である。すなわち、E♭、F、GそしてA♭ホルンが他よりも望ましい。

多くの作曲家は、この新しい楽器に反対を明らかにした。なぜならば、そのオーケストラへの導入によって、普通(自然)ホルンのパートをピストンで演奏するかなりのホルン奏者は、作曲家によりもっぱら「閉塞音」として書かれた音を、このメカニズムを使って「開放音」として演奏するほうが、より都合がよいと判ったからである。これは、実際、危険な乱用である。が、その増加を妨げるのは、オーケストラの指揮者のためであり、さらには、堅実な奏者が手にするピストン付きホルンは、普通のホルンの閉塞音をまだ全て出せる、ということを忘れてはならない。ピストンの使用は、楽器の調を変化させることで、主調音に加え他の調の開放音を出すことを可能にしたゆえに、明らかに閉塞音をも確実にしたのだ。

以上、ベルリオーズ著『現代管弦楽法』(1843)から

188.コンスタンティン・シルヴェストリのこと

投稿者:夢中人 - 2001年10月08日 12時35分25秒

レコード芸術1964年(昭和39年)5月号に、NHK交響楽団を客演するために来日したコンスタンティン・シルヴェストリの宇野功芳氏によるインタビュー記事が掲載されています。

(演奏という行為についてどう考えているかを尋ねられて)
 最近あるアメリカ人の家にブラームスが自分でピアノを弾いたレコードが残っていることが分りました。レコードといっても最も初期のもので、音は悪いのですけれど、ブラームスが「これはヨハンネス・ブラームスの演奏である」と何回もしゃべってから《ハンガリア舞曲》を弾いているのです。又マーラーが自分で第4シンフォニーをピアノで弾き、その中でマーラーが一緒に歌っているレコードも発見されました。そのほかドビュッシーの演奏も残っていますし、私自身もグリーグが自分で弾いたレコードを持っています。さて、これらの演奏を聴いてまず感じられることは、メトロノームのように正確無比なものではなく、テンポが大変自由に動いているということなのです。

 私はエネスコからフランクやショーソンの演奏の仕方を教わることができました。エネスコはイザイエの親友であり、イザイエは直接にこれらの作曲家から演奏を教えてもらったわけですけれども、それは決して機械的なものではないのです(中略)

 ドビュッシーの演奏がメトロノーム的なものではなかったということですが、彼は「メトロノームは最初のテンポを決めるためにだけ必要だ」といっていました。ベートーヴェン時代の有名なピアニストが、ベートーヴェンに手紙を出してメトロノームの指定をきいたことがあります。すると返事が2通来て、両方の指定が違っていたそうです。それでどっちが正しいのですかと質問したところ、「俺は人間だから、いつも同じ機嫌ではいられない」と答えたという話が残っています。私の意見としては、作曲者がメトロノームの指定をしている場合は、もちろんそれが中心になるわけですが、当然振幅があってよいでしょうね…

1913年ブカレスト生れのルーマニア人で、小太りで大変背が低い、というシルヴェストリの記事を宇野氏は、「こうした指揮法は、真の演奏家魂、舞台人の才能を持った人だけが成し得ることだろう」と結んでおられます。 残された録音の数々を聴きながら「演奏における個性」ということをいつも考えさせられます。普遍ではないけれども、とても大切、4、50年前との比較でいうと、今それが大変希薄になっているのではないか、と。
パリ音楽院管弦楽団/コンスタンティン・シルヴェストリ〜CONSTANTIN SILVESTRI THE COLLECTION
ブラームス/ハンガリア舞曲 第5番、第6番
ドヴォルザーク/スラヴ舞曲 第1番、第2番
ファリャ/恋は魔術師、La vida breve
ボロディン/ダッタン人の踊り
デュカ/魔法使いの弟子
ラヴェル/ボレロ
ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲、3つの夜想曲、海
この他、ベルリオーズの幻想交響曲が山野楽器から。

187.ドビュッシーの交響詩《海》

投稿者:夢中人 - 2001年10月06日 20時53分28秒

ドビュッシーの交響詩《海》を聴きました。この曲にはフランス国立放送局管弦楽団/ジャン・マルティノン(1973年録音)という模範録音がありますが、今日聴いたのはパリ音楽院管弦楽団/コンスタンティン・シルヴェストリ(Disky Communications DB 707432)という曲者です!

実を言うと、以前からドビュッシーの音楽は《牧神の午後への前奏曲》から、「水彩画」とか「霞み」のようなイメージを抱いていましたが、かなりの認識不足というものでした。

シルヴェストリの棒は、相変わらずの金管強調で、ちょっとうるさい感もありますが楽しめます。殊に第3部「風と海の対話」は、まるでホルンのベルにマイクロフォンを向けたのでは?と思える程、上から下まで全部どアップ。念の為、ORTF/アンゲルブレシュトのTestament盤も聴きましたが、何れも物凄いホルンでした。
707433)

186.ピエール・デル・ヴェスコーヴォのモーツァルト/ホルン5重奏曲

投稿者:夢中人 - 2001年09月24日 23時30分21秒

今日、高校の時の先輩からピエール・デル・ヴェスコーヴォ、バルヒェット弦楽4重奏団のモーツァルト/ホルン5重奏曲のLPレコードを借り受けました(このレコードについては今まで何度も触れてきましたが、手にするのは実に30年ぶりです)。

当時の話をお伺いすると、カップリングになっているクラのランスロの演奏(同じモーツァルトの5重奏曲)が素晴らしいということで、東京に行ったご兄弟がわざわざ送られてきたものだそうです。

佐川吉男さんによる「演奏者について」にはこうあります…

「ピエール・デル・ヴェスコーヴォはフランス最高のホルン奏者の1人として知られ、有名なパイヤール室内オーケストラやウーブラドゥ室内オーケストラのソロイストとして活躍中。ここでもいかにもフランス風を思わせるすっきりした味の柔軟軽妙なホルンをきかせる。」

弦のラインホルト・バルヒェットはかってカール・ミュンヒンガーのシュトゥットガルド室内楽団のコンサート・マスターをつとめた人だそうです。

LPの表紙にはホルトンかなんかの「極太管」のロータリー・ヴァルヴ式ホルンの写真が掲載されていますが、高1生で、ホルン初心者の私には看破しようもありませんでした。レーベルはヴォアドールレコード(VOIX-D’OR)となっていますが下に小さく(エラート録音)とあり、番号はVOS-3020E、1961年5月というのは発売年月でしょうか。それにNIPPON WESTMINSTER CO.,LTD.という馴染みのない会社名も気になります。

有名なホルン奏者は、必ずといって良いほど協奏曲とともに、取り敢えず5重奏も録音しますけれども、曲想がシンプルで、なにやらエチュードのようであるためか、なかなか味のある演奏にお目にかかれません。先頃出たBBCの放送録音でも、少しクセのあるヴァイオリンを尻目に、デニス・ブレインは「我関せず」といった風情で吹いていました。ひとつだけLPでエーリッヒ・ペンツェルが田舎風の演奏をしていたのを面白く感じました。

この点、ヴェスコーヴォは違います。華やかな音色で朗々といかにも楽しげに吹いていますし、抜群の運動性があるため音楽が生き生きと聞えます。弦がドイツ人でキッチリと真面目なのに、フランス人コルニストはまるで悪戯ッ子のように我がもの顔で吹きまくる、実に面白い演奏です。

こんな名盤も、その後エラート・レーベルで再発された形跡も無く、長らく埋もれた演奏となっています。
◎ギャルド吹奏楽団研究家、木下直人様よりこのヴェスコーヴォ盤は、その後もう一度日本コロンビアからステレオLPで出ている、とのご指摘を頂きました。大変失礼致しました。お礼及びお詫び申し上げます。ありがとうございました。夢中人

さらにKAZUさんからさらなるご指摘で「7年前に一度CD化されています(ワーナー:WPCS-4277)。ただカップリングはオリジナルLPのランスロではなく、バルヒェットのシューマンの弦楽四重奏、ヴォルフのイタリアのセレナードです。」

185.新世界、ラルゲット…

投稿者:KAZU@こるにすと - 2001年09月17日 22時32分41秒

KAZU@しばらくパソコンの調子が悪くてネットできなかったぞ! です。

夢中人様ご推奨の新世界、ラルゲットを私も早速聞いてみました。

新世界のホルンセクションは音を聞く限り1番-フルニエ、3番-ガンティエと思われますが、フルニエが美音で繊細にテーマを奏すると、ガンティエがパワーで3,4楽章を豪快に鳴らしまくっています。フルニエは音量はあまりないのですが音が本当に美しい!4楽章の最後に奏するテーマの美しいこと…(ここは本来1,2番のユニゾンだがあえて1番のソロにしています)この二人は役割分担がハッキリしていて本当によいコンビです(二人ともギャルドOB)。シルヴェストリはルーマニア人ですから音楽的には完全にラテン系で、フランスオケとの相性は抜群ですね。

私は不覚にもヴェスコーヴォのラルゲットにオケ版があるのを知りませんでした。1979年録音のピアノ伴奏版と比較して聞きましたが、基本的な解釈は全く同じで両方とも大変すばらしい演奏でした。オケ版のほうがややテンポを遅めにとって、テンポを揺らして歌いまくっていました。オケ・指揮者は合わせるのに結構苦労したのではないでしょうか?使用楽器こそコーンですが、往年のピストンでの演奏に音色はかなり近かったと思います。所々ヴィブラートもかかってました。無理して我慢しなくてもいいのに…

フランスは基本的にオケは60歳定年ですからヴェスコーヴォ退団直前の演奏ということになりますね。この往年の名奏者はトゥールーズの地方オケではおそらくスター扱いだったことでしょう。86年の同オケのラヴェルのパヴァーヌにもちゃんとクレジットが入っています(もっともこの演奏はよほどやる気がなかったのか凡演で、初めて聞いたとき大いに失望しました)。このラルゲットは通常シャブリエの管弦楽集に取り上げられるようなことは滅多にないマイナーな曲ですが、隠れた名曲だと思います。おそらくプラッソンはこの老演奏家の退団の花道として、彼のお気に入りのこの曲をオケ伴奏で録音することにしたのではないでしょうか?ヴェスコーヴォにとってもこれは最高のプレゼントだったのでは?

蛇足ですが、私もこの曲が大好きで室内楽の授業でピアノ伴奏で演奏したことがあります。いつも解釈面で先生に厳しい注文をつけられるのですが、この曲に関しては「あなたはこの曲を本当によく理解している。私が教えることは何もない。」と言われた唯一の曲です。またいつか機会があれば演奏したいものです。とてもヴェスコーヴォのように見事には吹けませんが…

184.カラビニエーリ吹奏楽団

投稿者:夢中人 - 2001年09月13日 21時59分18秒

アメリカが大変な時にアレかもしれませんが、10月2日と3日、東京オペラシティーで第6回「世界のお巡りさんコンサート」が開催され、イタリアのカラビニエーリ吹奏楽団(イタリア国防省警察音楽隊)が出演する予定。

高校の時、1年下の学年がポンキエルリの《時の踊り》をやって、カラビニエーリのレコード(RCAビクター)を模範にして何度も聴きました。大編成の吹奏楽の醍醐味と歌心溢れる演奏でした。

また2日はベルリオーズの葬送と勝利の交響曲のレコード(デジレ・ドンディーヌ指揮)で有名なパリ警視庁音楽隊も出演します。尚、9月12日付け毎日新聞にコンサート招待の告知が出ました。

183.シャブリエ「ホルンと管弦楽のためのラルゲット」/ピエール・デル・ヴェスコーヴォ/トゥールーズ・カピトール国立管弦楽団

投稿者:夢中人 - 2001年09月10日 23時11分27秒

トゥールーズ・カピトール国立管弦楽団の来日記念盤、シャブリエ管弦楽曲集(TOCE‐55320-21)の中の1曲、「ホルンと管弦楽のためのラルゲット」でピエール・デル・ヴェスコーヴォがソロを取っているのをご存知でしょうか。裏面にヴェスコーヴォの名前が記載されておらず、表紙のCD初期盤(EMI 754 004-2)写真に辛うじてPIERRE DEL VESCOVO の文字を確認できます。

録音は1989年9、10月とありますので、ヴェスコーヴォ60歳(1929年生れ)、ということになります。私にとっては1973年、エラートから発売されたパイヤール室内管弦楽団とのモーツァルトの協奏曲全曲以来の邂逅ということになりますが、何か懐かしさと、過去において、やや裏切られたホロ苦さが同時に思い出され、祈るような気持ちでPLAYボタンを押しました。

独奏ホルンは夢見ごこちで、自分の音色に酔うように吹きまくります。そこにモーツァルトの協奏曲全曲で見られたような「迷い」はありません。モーツァルトの五重奏曲や1960年頃までのラムルー管弦楽団及びギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団在籍当時のスタイルとは随分違いますが、しっかりとした表現です。

そんなこんなで、とても良い聴き終わりとなりました。以前ご紹介頂いたテヴェのリサイタル盤では表紙に幾星霜経られても、お元気そうなご尊顔を拝見しましたが、現在70歳を越えられたヴェスコーヴォさんは、トゥールーズでお元気でおられるのでしょうか。ありえないとは思いつつ、現在のトゥールーズ・カピトール国立管弦楽団のメンバー表(↑)を確認しましたが、勿論その名前はありませんでした。

182.ORTF/シルヴェストリの「新世界」

投稿者:夢中人 - 2001年09月09日 21時42分56秒

ORTF/コンスタンティン・シルヴェストリの「新世界」聴きました。フィルハーモニアとのチャイコフスキーの第5などで、テンポを激しく動かす血の気の多い棒を振る人、というイメージを持っていましたが、意外や意外、ひたすらインテンポの直線的な演奏でした。

金管楽器の強調は相変わらずですが、上から下までバランスが素晴らしく良く、第1楽章のホルンによる主題も相当集中力を持って奏されます。第2楽章のコールアングレは淡々としてあまり歌わないところが、逆に心に沁みました。

またラジオフランスのフランス国立管弦楽団のサイト(↑)をチェックしました。「歴史」のページに1973年セルジュ・チェリビダッケ首席客演指揮者に指名(1975年まで)、とあるのみ。「ディスコグラフィー」にアンゲルブレシュトのドビュッシー(ディスク・モンターニュの6枚組)を紹介していますが「1960−1963年録音」とは異なことを!
■問 ドヴォルザークの演奏法について(シルヴェストリの指揮した「新世界」と第8のレコードが、他の演奏に比して大きな身振りがなく、直線的な理由)

■答 ドヴォルザークにはもちろん彼の様式というものがあるが、別に異なった指揮はしていない。何度も繰り返して聴かれるレコードにおいては、自由な即興的な演奏では鼻につくおそれがあるので、私は実演よりもすっきりと指揮するようにしています。演奏会では聴衆の雰囲気によっても変わるし、ホールの残響によっても変わる。(中略)ドヴォルザークのやり方が私のレコード録音に対する考えなのですが、他のレコードにより多くの自由さが認められるとすれば、それは録音する場所の音響効果を考慮した結果、そうなったのだと思います。私は「新世界」を同じオーケストラで(モノラルとステレオで)2回録音しているのですが、第3楽章のテンポが違います。二度目の方が遅いのです。これはリハーサルの回数が原因であって二度目の方が私の理想に近いわけです。このように同じレコード録音についても一概にはいえないのですが、私のレコードはイギリスでは評判が悪いのですよ。何しろ保守的な国ですからね。

(レコード芸術1964年5月号、宇野功芳氏によるインタビュー、コンスタンティン・シルヴェストリ―非常に個性的な指揮者―から)

181.ご参考

投稿者:ヒデ - 2001年09月09日 5時04分52秒
こちらのHPにチェリビダッケが1945年にベルリン・フィルを指揮した
ブラームス4番の音源があり、聴くことができます。
 ↓


彼は当時、カラヤン以上の実力がありながら、ベルリン・フィルとの間にもトラブルを
起こし、去っていきました。


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