ピストン付きホルンは、調性(キー)を瞬時に変化させる機能を持つ特別なメカニズムにより、開放音による全ての音を出すことが出来る。かくしてピストンの使用はFホルンをEホルン、或いはE♭ホルンに変換する(中略)それゆえ、ひとつの調性の開放音に他の調性が加えられた結果、開放音による完璧な半音階が可能となった。
最低音のCから上の自然低音には、かなりの空白があって、このシステムはそれらを埋めることが出来るため、特に2番ホルン奏者にとって都合が良い。しかしながら、ピストン付きホルンの音色は、普通のホルンと少し違っており、そのために全て置き換わりえない。私は、ほとんど別の楽器のように取り扱われるべきと考える。特によく響く、力強い低音(とてもよく似ているとされるテナートロンボーンの低音ほどには強くないけれども)に相応しい。また、特に主に中音域での旋律を上手く演奏することが出来る。
ピストン付きホルンの最善の調性は(曲の正確な記譜に全く申しぶんがない唯一のもの)いくつかの中間の調である。すなわち、E♭、F、GそしてA♭ホルンが他よりも望ましい。
多くの作曲家は、この新しい楽器に反対を明らかにした。なぜならば、そのオーケストラへの導入によって、普通(自然)ホルンのパートをピストンで演奏するかなりのホルン奏者は、作曲家によりもっぱら「閉塞音」として書かれた音を、このメカニズムを使って「開放音」として演奏するほうが、より都合がよいと判ったからである。これは、実際、危険な乱用である。が、その増加を妨げるのは、オーケストラの指揮者のためであり、さらには、堅実な奏者が手にするピストン付きホルンは、普通のホルンの閉塞音をまだ全て出せる、ということを忘れてはならない。ピストンの使用は、楽器の調を変化させることで、主調音に加え他の調の開放音を出すことを可能にしたゆえに、明らかに閉塞音をも確実にしたのだ。
以上、ベルリオーズ著『現代管弦楽法』(1843)から
パリ音楽院管弦楽団/コンスタンティン・シルヴェストリ〜CONSTANTIN SILVESTRI THE COLLECTION
ブラームス/ハンガリア舞曲 第5番、第6番
ドヴォルザーク/スラヴ舞曲 第1番、第2番
ファリャ/恋は魔術師、La vida breve
ボロディン/ダッタン人の踊り
デュカ/魔法使いの弟子
ラヴェル/ボレロ
ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲、3つの夜想曲、海
この他、ベルリオーズの幻想交響曲が山野楽器から。
◎ギャルド吹奏楽団研究家、木下直人様よりこのヴェスコーヴォ盤は、その後もう一度日本コロンビアからステレオLPで出ている、とのご指摘を頂きました。大変失礼致しました。お礼及びお詫び申し上げます。ありがとうございました。夢中人
さらにKAZUさんからさらなるご指摘で「7年前に一度CD化されています(ワーナー:WPCS-4277)。ただカップリングはオリジナルLPのランスロではなく、バルヒェットのシューマンの弦楽四重奏、ヴォルフのイタリアのセレナードです。」
■問 ドヴォルザークの演奏法について(シルヴェストリの指揮した「新世界」と第8のレコードが、他の演奏に比して大きな身振りがなく、直線的な理由)
■答 ドヴォルザークにはもちろん彼の様式というものがあるが、別に異なった指揮はしていない。何度も繰り返して聴かれるレコードにおいては、自由な即興的な演奏では鼻につくおそれがあるので、私は実演よりもすっきりと指揮するようにしています。演奏会では聴衆の雰囲気によっても変わるし、ホールの残響によっても変わる。(中略)ドヴォルザークのやり方が私のレコード録音に対する考えなのですが、他のレコードにより多くの自由さが認められるとすれば、それは録音する場所の音響効果を考慮した結果、そうなったのだと思います。私は「新世界」を同じオーケストラで(モノラルとステレオで)2回録音しているのですが、第3楽章のテンポが違います。二度目の方が遅いのです。これはリハーサルの回数が原因であって二度目の方が私の理想に近いわけです。このように同じレコード録音についても一概にはいえないのですが、私のレコードはイギリスでは評判が悪いのですよ。何しろ保守的な国ですからね。
(レコード芸術1964年5月号、宇野功芳氏によるインタビュー、コンスタンティン・シルヴェストリ―非常に個性的な指揮者―から)