ホルン・コール

デニス・ブレインからの手紙


 デニス・ブレインがメルボルン交響楽団のホルン奏者、ゴードン・グリーヴ氏に宛てた手紙を、受取人の弟、アレックス・グリーヴさんのご好意により掲載しました。 ゴードン・グリーヴ氏は前回のアメリカ演奏旅行の際、「一番良い」ホルン、マウスピースの形、金属の種類などについて沢山質問を受けました。 この手紙の公開は、デニス・ブレインがボアの細いフランス製ホルンのことを論じているため、誠に時を得たものといえるでしょう。

(この手紙は、国際ホルン協会(IHS)、1971年5月及び2000年8月発行「ホルン・コール」に掲載されたものを、同協会誌編集長、ジェフリー・スネデカー氏に許可を得て翻訳、再掲載したものです。)

ハムステッド 7294

"クレイグモア"
37 フログナル
ハムステッド
N.W. 3
1953年2月3日


ゴードン様

 僕の楽器についてちょっと書いてみます。
 それはもともとラウー作の替管付きナチュラル・ホルンで、後で三つの取り外し可能なピストン・ヴァルヴ(弁)を付け、その格好のF管でシュトラウスの協奏曲やブリテンのセレナードなどほとんどの録音を行いました。 ラッパ(ベル)の一番上のあたりに銘刻があります。それからしばらくB♭替管を使って演奏して、結局楽器をゲシュトップ用のAナチュラル切替ヴァルヴ付きB♭ホルンに改造しました。 それから最近フランスの奏者が使っている3番上昇ヴァルヴが効果的なことを考えて、もう一つCアルト切替ヴァルヴを付け、A、B、C、Dといった高音を出しやすく、またシューベルトの八重奏曲で何度も出てくるペダルGやローGに対応出来るようにしました。

 僕がラウーを大きなドイツ製ホルンより好きな訳は、ピストンの動きやら古い柔らかい金属材料やらのおかげで、より柔らかく、もっとなめらか(legato)な音が得られるからです。 いま使っている細いマウスパイプと小さなマウスピースを付けたアレキサンダーのB♭シングルは、吹きやすさの点ではそれ(ラウー)ほどもありませんが、結構いい音がすると思っています。

 でも、別に君を困らすつもりはないので、もし他に判らないことがあったら遠慮なくお手紙下さい。トムは僕のことを筆不精だと言うだろうけど、きっと返事を出します。

敬具
デニス・ブレイン

デニス・ブレインのホルン「ラウー」
デニス・ブレインのホルン「ラウー」
(写真提供/アレックス・グリーヴ、オーストラリア)

国際ホルン協会


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