1989年8月XX日付朝日新聞夕刊

天才ホルン奏者デニスのCD発売
不世出の天才ホルン奏者と言われながら、一九五七年に三十六歳の若さでなくなったイギリスのデニス・ブレインの全芸術を伝えるCDが、東芝EMIから出た。
 祖父、父に続いてホルン奏者となったブレインは、フィルハーモニア管弦楽団に属す傍ら、ソロ、室内楽、指揮など多彩な活動を繰り広げた。その妙技に触発されて、ブリテン、ヒンデミットら同時代の多くの作曲家が彼のために作品を書いている。
 フルトベングラー、ビーチャム、カラヤンといった名指揮者も彼との共演を望んだ。団員に要求の強かったカラヤンも、練習で出番までの間に自動車雑誌を読む彼に苦笑し、共通の趣味である車について無邪気に語り合ったというエピソードを残している。

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